1924年の第1回センバツ(選抜中等学校野球大会)で優勝した“レジェンド校”、高松商(四国・香川)が、逆転で初優勝を決めた。3点を追う8回に5安打で5点を奪うと、9回も3得点を奪い敦賀気比(北信越・福井)を破った。

 創部106年の伝統に、誇れる歴史がまた加わった。秋の全国初優勝。第1回センバツ王者が今春センバツ王者に打ち勝った。3点を追った8回だった。逆転の9人攻撃。9回も3点を奪い、歓喜のときを迎えた。「1つ1つのアウトをしっかり取る気持ちでやってきた。選手が粘り強く戦ってくれました」。長尾健司監督(45)の声が、秋空に吸い込まれた。

 8回無死満塁。暴投で1点を返し、なおも無死二、三塁から米麦(よねばく)圭造内野手(2年)が同点打。「四国の野球は粘り強いんです」と試合を振り出しに戻した主将に美濃晃成内野手(2年)が続いた。1死三塁から一塁線を破る勝ち越しの適時三塁打。「打席に入る前、監督に任せるぞと言われ、無心でバットを出しました」。9回は2点打でダメを押した。8、9回の好機を広げたのは吉田啓瑚(2年)荒内俊輔両外野手(2年)のバントヒット。三塁線を狙った犠打はいずれも投手への内野安打になり、同点、逆転、ダメ押しにつながった。「バッテリー以外は俊足」(長尾監督)の長所を生かした。

 中学の軟式野球部を2度全国大会に導いた経験を持つ長尾監督は昨春、県の公立校の人事交流で着任。監督就任後、ぎごちない上下関係を打破。「自分のことは自分でやる。年上がまず動く」。その理屈で、監督自身が率先して動いた。グラウンド整備に走り回る監督を見て部員もあとを追った。侍ジャパンの歴代指揮官の言葉も参考にした。「王さんも小久保さんも、練習から120%の力で振るんだ、と言われてました」。流す打撃練習は戒め、敦賀気比、大阪桐蔭に打ち勝つ打力を養った。

 声援を送り続けた地元からの応援団に感謝しながら「復活と呼べるかどうかはこれから。伝統というのは続かないといけない」と長尾監督。注目の古豪ではなく、優勝候補で20年ぶりの春に臨む。【堀まどか】

 ◆神宮枠こうなる 高松商の優勝で、四国地区に来春センバツの明治神宮大会枠が1つ与えられる。四国大会優勝の高松商、準優勝の明徳義塾(高知)に加え、4強の済美(愛媛)と土佐(高知)の争いになりそうだ。中国2、四国3プラス中国・四国1の合計6校がセンバツに出場する。