盛岡大付(岩手)が「松坂2世」を攻略して、2年ぶりに16強入りした。創志学園(岡山)のプロ注目右腕、「松坂2世」の異名を取る高田萌生(ほうせい、3年)から10点を奪ってKO。4回に3番植田拓外野手(2年)のソロ本塁打をきっかけに4点差を追いつくと、5回にも4点を取って逆転した。2試合連続の2本塁打&14安打と強打を発揮。11-8と退けて、春夏通じて初の1大会2勝を挙げた。3回戦は16日の第3試合で鳴門(徳島)と対戦する。

 劣勢でも慌てていなかった。4点を追う4回1死。植田が「自分がチャンスをつくれば流れが来る」と、真ん中高めのスライダーを捉えた。高校通算25本目のソロ本塁打が左翼席で弾む。「出塁を意識していましたが、打った瞬間、行ったと思った」。大阪・貝塚一中3年時の2年前の夏、甲子園で盛岡大付の2試合を観戦して入学した右の強打者が、今大会最速の152キロを2球計測した高田のリズムを狂わせた。

 1打席目、速球に振り遅れて空振り三振した。だが変化球をたたいた本塁打の第2打席は「ファーストストライクの甘い球を打つ」と、積極的なスイングが実った。関口清治監督(39)が、大きな一撃と評価する。「あのホームランで点を取れるかな。流れが変わるかなと思った」。

 植田の本塁打直後に3連続四球。二ゴロと2本の内野安打で同点に追いついた。5回には5番伊藤勇貴(3年)の勝ち越し2点打など、4点を奪って逆転した。6回は4番塩谷洋樹(3年)の2ランで高田を降板させた。中盤につくったビッグイニング。関口監督は「ワンチャンスで複数点を取らないと苦しいと思った」と言う。好投手だからこそ、伊藤も「チャンスは少ない」と一振りに集中した。

 4年前の岩手大会決勝。当時最速160キロの花巻東・大谷(日本ハム)を破って甲子園を勝ち取った。剛腕攻略の秘策として始めたのが、打撃投手を通常より5~6メートルほど打者に近づけて投げさせる、近距離バッティング。球速140キロが体感では155キロ程度になるという。関口監督は「うちは打つしかすべがない。素振りよりも、手投げで打たせることを大切にしてきた」と、最速154キロを誇る高田対策としても活用。植田は「練習の成果が出た」とうなずいた。

 2回戦からの登場で、1勝して16強入りした2年前とは違う。1回戦に続く2本塁打を含む14安打で、初めて1大会2勝した。植田は「打ち勝つ野球はどこにも負けない」と言い切った。プロ注目の高田を「パワー、打力は今までで一番でした」と脱帽させた強打が、初の8強入りをグッと近づけている。【久野朗】