早実の清宮幸太郎内野手(2年)が、来春センバツ出場に王手をかけた。国士舘戦に「3番一塁」で出場。3回に右前へ7打席ぶりの安打を放って打者一巡の猛攻を呼んだ。3打数1安打1死球で7回コールド勝ち。勝てばセンバツ出場が確実となる11月3日の決勝で、日本ハム斎藤を擁した05年以来の頂点を狙う。

 清宮が、晴れ晴れとした表情で校歌を響かせた。前日29日の準々決勝で関東第一を倒した勢いそのままに、超満員の観衆約5000人の前で国士舘を圧倒。春の聖地が、はっきり見えた。「みんないい集中力で戦えた。優勝して決めたいです」。ガラガラにかれた声で、あと1勝を誓った。

 主将はチームを“覚醒”させた。関東第一戦後のロッカールーム。喜びに浸る間もなく、仲間に声をかけた。

 「安心できるところじゃない。次で負けたら意味がない。切り替えよう」

 主将のゲキでまとまったナインは、序盤から集中打を浴びせた。4番野村大樹内野手(1年)は、4回に中越えへ高校通算20号ソロを放った。清宮の1年時(22本)を上回るペースだ。

 自ら掲げたスローガン「GO! GO! GO!」のとおり、最後まで気を緩めさせなかった。9-0の7回、先発の中川広渡投手(1年)が連打を浴びて無死一、二塁。マウンドに集まり、清宮は言った。「どんな展開でもピンチは必ず来る。野球はそういう風にできてる」。初の連投だった中川は後続を断ち、7回無失点で初完投を飾った。

 1年前の苦い経験が、清宮の心を成長させた。昨秋の東京大会2回戦、二松学舎大付に1-0の9回裏に追いつかれ、10回サヨナラ負け。「ずっと勝っていたのにあっさり点を取られて、気がついたら負けていた」。失敗を繰り返さないために、常に最悪の状況を想定してきた。「甲子園、甲子園と言われるけど、目標は優勝して明治神宮大会に出ること」。あくまでも、目の前だけを見据えた。

 今秋の練習試合で日大三島(静岡)に敗れると、仲間に「盛り上がりが足りない」と、声出しを求めた。今大会では全員がスローガンを叫び、相手をのみ込んだ。「みんながついてきてくれるのがうれしい。みんなで甲子園…、じゃないですね。何を言ってるんでしょうね」。封印していたはずの「甲子園」の3文字が、思わずポロリ。大人になった清宮が、いたずらっぽく笑った。【鹿野雄太】

 ◆早実・清宮のセンバツへの道 関東、東京の出場枠は「6」。東京大会優勝校は確実で、関東は02年から4強進出校が翌年のセンバツに出場。今秋は作新学院(栃木)、東海大市原望洋(千葉)、前橋育英、高崎健康福祉大高崎(ともに群馬)が4強入りした。最後の6校目は地区大会の成績や地域性を考慮し、例年は東京準優勝校と関東8強校の中で争われる。