昨夏の高校野球100回大会で、日刊スポーツ「編成部長」として全国の球児をチェックした前ロッテのサブロー氏(42)は、大船渡(岩手)・佐々木朗希投手(3年)に対し、投手大谷(エンゼルス)を超える新怪物と究極の賛辞を送った。

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佐々木は平成最後の怪物にして、新元号の最初の怪物になる。奥川(星稜)西(創志学園)及川(横浜)が「四天王」と呼ばれていると聞くが、四天王ではない。1人だけ突き抜けた存在だ。作新学院戦を見て、比較するなら花巻東時代の大谷しかいないと感じた。そして投手としてだけなら、この時点で佐々木の方が上だと思う。

球速を生むヘッドスピード、つまり腕の振りがとにかく速い。左足を胸の高さ近く上げても、ぐらつかない体幹の強さもある。156キロの球は捕手より約5メートルほど真後ろから見たとしても、突き抜けてくるような感覚を覚える。

球質のデータ計測をしてないので断言できないが、右打者の外角へ引っかき気味に投げる球は伸び上がり、それ以外のコースの球は食い込んでいる。速球はホップ型(直球のスピン量が多く、キレがある。浮き上がるような高めの直球で空振りが取れる)とタレ型(伸びずに落ちて見える球。直球でゴロアウトを多く取る。打者はボールの上っ面を打つケースが増え、長打が出にくい)に分けられる。大谷はタレ型だが、佐々木は無意識だろうが、2つの型を備えている。三振も取れ、ゴロも打たせられる理想型だ。

変化球の制球なら佐々木の方が断然いい。私も現役時代にルーキーだった大谷と対戦したが変化球でストライクがなかなか取れなかった。佐々木はスライダーはほぼ完璧に操れている。どこでリリースすれば、どういう軌道を描くのか感覚をつかんでいる。

チェンジアップも「抜け」が良く、奥行きのあるボールを投げている。これまで対戦した投手で最高のチェンジアップを投げていたのはグライシンガー(元ヤクルト、巨人、ロッテ)。1球種に絞って狙い打ちしたのに、体が前に泳がされてバットの先っぽでシャンク気味に打たされたことがある。右投手を真横から見られる三塁方向からも確認したが、作新学院の選手たちも体が前に突っ込んでいた。奥行きを感じているからこその反応だ。

打者として二塁打を放ったが、走っている姿も柔らかさがある。打つ、投げるではなく、走りは根本的な運動能力が現れる。俊足の大谷が身体能力が高いように、佐々木も天性のフィジカルを備えている。

正直、同じ野球人として、これほどの才能があることが、うらやましくさえ感じた。だから、あえて言いたい。高校卒業と同時にメジャーに挑戦してほしい。今まで日本人の高校生がほとんど歩んだことのない道だが、それほどの才能に恵まれている。世界の「OHTANI」を超えるのは「SASAKI」だ。