「高校四天王」の一角、星稜(石川)奥川恭伸投手(3年)が、3回戦の金沢大付戦でこの夏初登板した。2回を投げ、1人の走者も許さない無安打6奪三振の完全投球を披露。球場のスピードガン表示で自己最速を大幅に更新する158キロをマークし、レベルアップを証明した。打線も12安打12得点で5回コールド勝ち。攻守で星稜が波に乗った。

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球場内の視線を、奥川が独り占めした。9点リードの4回、マウンドへ向かった奥川を「待ってました!」と言わんばかりの拍手と歓声が包んだ。この夏、初のマウンド。「やっと公式戦で投げられて楽しかったです」と笑顔がはじけた。

「奥川劇場」の幕開けだった。「打てていなかったので、取り返したいと思っていた」。この日は「5番・右翼」で先発も、3打数無安打。言葉どおりの投球でうっぷんを晴らした。「(三振を)狙っていきました」。先頭から球威ある直球で、2イニング全打者を6者連続三振に斬る圧巻の投球を披露した。

これだけでは終わらない。「力んでいいと思って投げた」。先頭打者の2球目に自己最速を4キロ更新する156キロをマーク。観衆の熱量に押されたか、相手の3番打者への初球はさらに最速を更新する158キロを表示した。5球目にも再度マーク。球場のざわめきを感じ取り「あれは壊れていると思います。なんとも言えません」と苦笑い。だが、球場関係者は「壊れてはないです」と故障を否定。視察した阪神スカウトのスピードガンでも、自己最速を1キロ更新する153キロをマークした。7月から再度、ウエートトレーニングで体作りに着手。結果が如実に表れ「良い感触。次につながる投球ができた」と手応えをつかんだ。

再会したい投手がいる。「すごいボールを投げてましたね」と意識するのは、大船渡・佐々木の存在。4月、U18高校日本代表候補1次合宿で交流。岩手から甲子園出場という同じ夢を追って戦う佐々木の試合を、ネット中継でチェックしている。「佐々木君はスピードが注目されている。自分は全部のバランスを意識しないと。違う部分で勝ちきって、甲子園で会いたいです」。春夏連続出場を果たし「令和の怪物」と再会する。北陸の剛腕も負けられない。【望月千草】

▽星稜・林和成監督(43)「何イニング行くかは昨日(20火)話しました。7月に入ってから調子が良くなかった。きょうはボールに力が伝わっていた」