2007年に発覚したプロ野球西武による専大北上高(岩手県北上市)野球部出身者への金銭供与問題で、懲戒解雇された同校元野球部コーチの男性(46)が、高校を運営する学校法人「北上学園」に地位確認や約1300万円の賃金支払いなどを求めた訴訟で、盛岡地裁は20日、訴えを全面的に認め、解雇は無効とする判決を言い渡した。

 田中寿生裁判長は「金銭援助の約束について男性が積極的に加担したわけではなく、自ら利得は得ていない」と指摘。「解雇は合理的な理由を欠く」とした。

 一方で判決は「男性は約束をうすうす察していた」とし「指導者だった男性は決して見過ごしてはならなかったのに、最終的にこの選手の野球人生を半ば閉ざす結果となり、非難されてもやむを得ない」とも述べた。

 判決によると、男性は03年、当時3年だった野球部員の両親や西武スカウトから懇願され、早大卒業後に西武への入団を約束する書類に「後見人」として署名・押印。問題発覚後の07年、男性は関与した責任を問われ、解雇された。

 訴訟で男性側は「金銭供与には一切関与していない」と主張。学園側は「後見人だったことや署名などの行為は、学園への信頼を失墜させた」などと反論していた。

 判決後、男性は「選手の人生を変えたことにわたしも関係している。プロ野球に行かしてやれず、本当に申し訳ない」と声を詰まらせた。