第81回選抜高校野球大会(3月21日開幕、甲子園)の出場32校が23日、大阪市での選抜選考委員会で決定する。21世紀枠の東北地区推薦校となっている利府(宮城)は、地元小・中学校への「出前授業」で地域に貢献。昨秋のチーム成績から前評判も高い中、遠藤聖拓主将(2年)は後輩を喜ばせる思いで運命の瞬間を迎える。

 運命の日を翌日に控えたこの日も、利府のグラウンドには大きな声が飛び交った。「授業中も落ち着かなかった。みんな待ち遠しい感じで、練習にも力が入った」と遠藤。創部25年目で、春夏通じて初の甲子園出場が決まるかもしれない。ナインは期待に胸を膨らませながら、夢舞台に立つ日を信じて体を動かした。

 困難を克服したり、他校の模範となる取り組みが評価される21世紀枠。利府は地域の清掃活動やナシの栽培農家の手伝いに尽力するが、何よりも地元の子どもたちとのきずなが深い。スポーツ科学科が設置された98年から毎秋、運動部員が町内10校の小・中学校に出向き、競技のルール説明や実技指導を行っている。

 遠藤は来月2日、母校・上杉山中(仙台市)の授業「先輩に聞こう」の特別講師として壇上に立ち、高校生活について話すことになっている。「甲子園出場が決まっているのと、そうでないとでは、話すことも全然違う。なんとか、いい報告がしたいですね」と、後輩を喜ばせたい一心だ。

 同枠は全国8地区の推薦校から、3校が出場校に選ばれる。その8校の中で利府は、昨秋道県大会唯一の優勝校。さらにブロック大会に進んだ他4校はすべて初戦敗退した中、利府は東北大会4強入りと成績でも遜色(そんしょく)ない。町内の小・中学校の生徒から千羽鶴も贈られ、期待は高まるばかりだ。「もし甲子園出場が決まったら、みんなに勇気を与えられるプレーをしたい」と遠藤。宮城の「公立の星」が、運命の吉報を待つ。【由本裕貴】