春のセンバツ高校野球大会(3月21日から12日間、甲子園)の出場を確実にしている北照が5日、始動した。昨年11月中旬以降のオフは体づくりを徹底。練習時間の3分の2は体力強化に専念し、この日も練習6時間のうち大半で走力アップと柔軟性を高めるためのメニューをこなした。10年ぶりの甲子園出場に向け、今月中旬から徐々にボールを使った練習を増やし、2月から本格的な実戦モードに入る。

 練習風景は野球部ではなくさながら陸上部。北照ナインは、走力アップを目指し、瞬発力を生み出すため体の根幹から鍛え直している。春甲子園に向け始動したこの日も、ふだんより短かったとはいえ、2時間30分で約20種類のメニューを繰り返した。西田明央(あきひさ)主将(2年)は「この練習のおかげで走力と敏しょうさは高まった」。ダッシュでも捕球動作を入れるなど、野球につながる工夫があるという。

 屋内練習場のど真ん中で指導しているのは寺中靖幸(のぶゆき)トレーニングコーチ(32)だ。本職は陸上自衛隊富士学校(静岡・小山町)のスポーツ担当教官で、トレーナーの資格を持ち、全国のアスリートの指導を行っている。「野球のできる体づくりを」と河上敬也監督(50)の要請で一昨年から同校野球部を指導している。

 全国の有力校は大会に備えて実戦メニューを多く取り入れる時期だが、北照ナインは体づくりのメニューを黙々とこなしている。「体の素地がしっかりとできているので、実際の野球ができる日が楽しみ」。西田主将の言葉に焦りはなく、自信さえ感じさせる。オフシーズンに月1回程度訪れている寺中氏は「全国の高校生を見ていますが、ここはトップレベルです」と証言する。

 1月中旬からは硬式球を使った練習メニューを増やし、2月10日から沖縄で約1週間のミニキャンプを行う方向で検討している。ボールを握る時間はどのチームより少ないが、10年ぶりの晴れ舞台へ“足場固め”を徹底。甲子園で最高のプレーを引き出す土台が着実にでき上がりつつある。【中尾猛】