第82回選抜高校野球大会(3月21日から12日間、甲子園)の出場校を決める選考委員会が29日、大阪・北区で開催され、出場32校が決定した。“東の横綱”東海大相模(神奈川)はプロ注目の右腕、一二三(ひふみ)慎太投手(2年)を擁し、00年以来のセンバツVを目指す。一二三は西武菊池雄星(18=花巻東)が昨年のセンバツでマークした152キロ超えで、怪物伝説を継承する。優勝候補の一角、帝京(東京)も92年以来の優勝が目標。組み合わせ抽選会は3月13日に行われる。

 出場校の発表が開始された午後3時過ぎ、一二三はグラウンドの一塁側ブルペンに入った。関東大会を制し出場は確実だったが、雑念を振り払うように正式通達までの20分間、右腕を振り続けた。06年以来の吉報を聞くと、「初戦突破を全員で目指したい。しっかりと自分たちがやってきたことを出したい」と前を見据えた。

 最速149キロの直球を誇り、大会NO・1投手の呼び声が高い。昨春、西武菊池雄星(花巻東)が甲子園でマークした152キロについて「出したい気持ちはあります」と視野に入れた上で、「スピードより、勝てるピッチングがしたい。その中でスピードを生かせていければと思ってる」と誓った。152キロを更新すれば、センバツ最速となる153キロ、さらに記録が見えてくる。

 昨年5月31日の練習試合で、一二三は雄星と投げ合った。互いに5回から登板し、無失点に抑えた。1学年上で気軽に話せる存在ではなかったが、「真っすぐも変化球もピッチングがすごかった。でもそれ以上に出てきただけでチームの雰囲気が全然、変わったんです」。一二三は東海大相模史上初の主将兼エース。存在感でも雄星を超えたい思いを秘めている。

 昨秋は14試合に登板し12完投。関東大会初戦から明治神宮大会準決勝まで、6試合50イニングを1人で投げ抜いた。すでに連日投球練習を行い、毎週末には紅白戦に登板。1月中でも最大6イニング投げた。門馬敬治監督(40)は「センバツは延長再試合だってある。3連戦で33イニング投げられる体力が必要」と鍛え上げている。

 生粋の東北人だった雄星とは違い、大阪生まれで音楽はヒップホップを愛している。11月の明治神宮大会決勝は、雨の中、自身のボークで逆転負けした。今は雨が降っても外で練習。マウンドに、あえて水をまくこともあるという。

 中学3年時に141キロを出し、硬式日本一を決める「ジャイアンツカップ」で優勝した。表彰式ではOBの巨人原辰徳監督と対面した。00年以来のセンバツVを果たせば、高校時代に準Vだった偉大な先輩も超えられる。この春、最も注目される男が、主役の座を狙う。【前田祐輔】