静清(静岡)に初めて春が訪れた。第83回センバツ高校野球(3月23日開幕、甲子園)の出場選考委員会が28日、大阪市内で行われ、昨秋東海大会準優勝の静清の初出場が決定した。県勢としては09年の掛川西以来2年ぶりの出場で、通算50勝にあと1勝に迫っている。開幕まで残り54日間。静清の挑戦がいよいよ始まった。

 吉報を受けた静清ナインに、浮かれた様子はなかった。初出場が決まった光岡孝監督(32)は「まずは1つ絶対に勝つ。たとえ優勝候補と対戦しても同じ1勝。全国で勝つことは(どの試合も)全国制覇と同じくらい難しいと思っている」と気を引き締めた。甲子園がついに現実のものとなった。しかし、約50人集まった報道陣の取材を受け終わると、すぐに練習を再開。指揮官の思いは選手も同じ。静清の甲子園に向けた挑戦が、ようやく幕を開けた。

 すべては甲子園で勝つためにある。昨秋の東海大会では、粘り強さを見せて決勝まで進んだ。一方で、大垣日大(岐阜)に敗れ優勝を逃した。エース野村亮介(2年)も「このままでは全国では勝てない。ちゃんとしごいて甲子園に向けてやっていきたい」。同大会以降、視線の先には常に甲子園があった。

 やるからには、万全を期して臨む。来月3日から1週間、沖縄強化合宿を決行する。入試期間で授業のないタイミングを利用して、県勢では異例ともいえる県外キャンプ。暖かい気候の現地では、早朝から夜まで野球漬けの日々が待っている。これまで夏の県大会直前の6月ごろに、同校恒例の「激練(げきれん)」と呼ばれる強化練習が、2週間から3週間にわたり行われてきた。「ここまでやるのか…」と選手が口にするほどの練習で、春の本番を前に徹底的に鍛え抜くつもりだ。

 甲子園での初戦は、勝てば静岡の野球史に名を刻む一戦となる。現在、県勢通算49勝で節目の50まであと1つ。振り返れば28年の初勝利から、21校の歴代出場校が積み重ねた白星の数がある。加藤翔主将(2年)は「自分たちの力ではなく、ここまで静岡の歴史があるから」と恐縮しながら「勝って50勝を超えたい。50勝目だけでなく、51、52と積み重ねていきたい」と意気込んでいる。

 チームは早速今日29日から2日間、掛川球場で今年初めて紅白戦を行う。投手は直球のみ。それでも沖縄強化合宿のメンバー25人を決める「選考試合」でもある。すでにチームには緊張感が充満している。「まだ通過点」と加藤主将は言い切る。文字通り、ゴールは甲子園で勝つこと。静清には無尽蔵の夢と可能性が詰まっている。【栗田成芳】