どれだけ点を取られて大敗するのかと思いきや、最終回は巨人ベンチを慌てさせるまでに苦しめた。

吉田義男(日刊スポーツ客員評論家) 阪神は“長嶋デー”だから巨人をもり立てるつもりはなかっただろうが、よく追い詰めました。2回2死から吉川の左飛をノイジーが捕球できず失策したのが痛かったし、直後に岡本和に2ランを浴びた。阪神が敗れるときはミスが絡むのが気になるところです。でも岡田の采配をみていても「余裕の1敗」だったように思いますね。

巨人対阪神 2回で6失点の阪神門別(左から2人目)を厳しい表情で見つめる岡田監督(右)(撮影・足立雅史)
巨人対阪神 2回で6失点の阪神門別(左から2人目)を厳しい表情で見つめる岡田監督(右)(撮影・足立雅史)

話題の門別が1回に4点、2回に2点を失った。いずれも2死からだ。それでも3回を投げ切らせ、4回からは2番手の岡留にスイッチした。

吉田 まず対巨人のカード初戦に、ベテラン西勇ではなく、19歳の門別を投入するんです。しかもいきなり6点取られて代えるかなと思ったら、辛抱強く引っ張った。6回は3点差まで追い上げ、なおも2死満塁の場面、わざわざ監督がベンチから出てきて、2打席連続三振の梅野に何やらつぶやいた。わたしの想像では「もう1回三振してこい!」と声をかけたのではないでしょうか。それぐらい思い切っていってこいと。つまり岡田の余裕ですわ。佐藤輝のこの先の処遇も考えているでしょうね。

巨人対阪神 6回表阪神2死満塁、打席へ向かう前の梅野(左)に言葉を掛ける岡田監督(撮影・加藤哉)
巨人対阪神 6回表阪神2死満塁、打席へ向かう前の梅野(左)に言葉を掛ける岡田監督(撮影・加藤哉)

阪神のペナントレースは三巡目に突入。だが長嶋茂雄氏の功績をたたえる記念日に2ゲーム差に詰め寄られた。

吉田 長嶋はプロ野球を支えた我々が生きた時代のヒーローです。ワンちゃん(王貞治氏)もです。そして“伝統の一戦”を象徴したのは、巨人は川上(哲治)さん、阪神が藤村(富美男)さんでした。それを我々後輩が引き継いできたつもりですし、次は岡田たちが継承してくれると思うと、わたしも心丈夫です。巨人も強くないとあきませんよ。でもこれで対戦成績は5分だが、やはり阪神が一枚上ですわ。自信をもって“当たり前”に戦い抜くことです。【取材・構成=寺尾博和】

巨人対阪神 4回裏を前に選手交代を告げる岡田監督(撮影・加藤哉)
巨人対阪神 4回裏を前に選手交代を告げる岡田監督(撮影・加藤哉)