<高校野球春季福島県大会:聖光学院15-3学法福島>◇12日◇北地区選手権◇決勝◇信夫ケ丘球場

 聖光学院の「東北最強右腕」歳内宏明(3年)が、夏の甲子園地方大会前、最初で最後の大会に登場した。決勝の学法福島戦に先発し、5回を6安打4奪三振の3失点。チームは15-3(5回コールド)で圧勝したが、歳内は「今季最悪」という調子の中で、夏に向けた課題を体感する登板だった。

 東北NO・1右腕が首をかしげた。初回2死、内野安打で出塁された走者を三塁に置いた歳内が、あっさり右前に適時打を浴びる。場内のどよめきは、3回にさらに大きくなった。高めに浮いた直球を狙われ、先頭打者から右越え三塁打、左中間二塁打、右前打。3連打でさらに2点を献上。試合前のブルペンから球が浮き「最近では一番、調子が悪くコントロールが定まらなかった」と反省した。

 昨夏甲子園で広陵(広島)と履正社(大阪)を連破し、8強に導いた。優勝候補筆頭だった昨秋の東北大会は準々決勝で仙台育英に7失点で敗退。センバツ出場を逃し、冬場は肉体改造に取り組んだ。食事量は変えずに下半身の筋肉量を増やし、体重は昨夏の72キロから10キロ増の82キロになった。

 ユニホームが張り裂けそうなほどの太ももが支える直球は、今月4日の練習試合・専大松戸(千葉)戦で145キロをマーク。昨年まで投球の約5割をSFF(スプリット・フィンガード・ファストボール)に頼っていたが「冬場、真っすぐにこだわった結果、3割から2割に減った」と歳内。エースが進化し、練習試合では駒大苫小牧(北海道)花巻東(岩手)浦和学院(埼玉)などの県外の全国区に連戦連勝して、今大会を迎えていた。

 それでも、打たれた。前日、登板を直訴しながらチームのコールド勝ちで投げられなかった事情もあり「序盤から力みすぎた」。そんな歳内に斎藤智也監督(48)は厳しく指摘した。「県外の強豪を抑えてきたことで、余裕を持ちすぎた。久々の観衆の前で、調子に乗ったのかもしれない。県内では、研究されていることも分かったでしょう」。

 無心になった絶対エースは4回と5回を難なく3者凡退。本来の姿に戻った。「今日の収穫は歳内が打たれたこと」と斎藤監督が言えば、歳内も「夏も、必ず今日のような展開があるはず。いい経験になった」。悲願の全国制覇へ-。東北最強右腕が、着実に課題をつぶしていく。【木下淳】