<高校野球宮城大会:気仙沼向洋6-2黒川>◇10日◇1回戦

 東日本大震災で、校舎が甚大な津波被害を受けた気仙沼向洋が、黒川に逆転勝ちし、1回戦を突破した。190センチの長身右腕、斉藤弘樹投手(3年)が6回5安打2失点と奮闘。「こうした中、背番号1をつけてマウンドに立てていることを誇りに思うし、感謝したい」と、振り返った。

 震災が契機となって進む道を決めた。以前は「普通に就職するつもりだった」。だが、震災当日、停電で真っ暗なはずの街が、火災でぼんやりと赤く光っているのを見て思った。「消防士になりたい」。

 父仁さん(62)は定年退職した2年前まで、地元気仙沼で消防士を務めていた。「野球でもっと上を目指してほしい」と思う一方、36年間やり抜いた仕事を息子が志してくれたことは素直にうれしかったという。

 斉藤は言う。「人の、世の中の役に立ちたいと思った」。電話が鳴れば昼夜にかかわらず出動した父の苦労は、間近で見ているが、決意は揺るがない。「エースはチームの大黒柱と思って投げたい」。まずは、昨夏の宮城大会準優勝を上回る成績を残したい。【今井恵太】