<全国高校野球選手権:大阪桐蔭3-0光星学院>◇23日◇決勝

 史上最速の新・怪物伝説だ。大阪桐蔭が光星学院(青森)との春夏同一カード決勝を制し、史上7校目の春夏連覇を達成した。エース藤浪晋太郎(3年)が決勝では78年ぶりの14三振を奪い、準決勝から2試合連続2安打完封。9回に決勝史上最速153キロを計測する投球で、今大会4本塁打の4番・北條史也内野手(3年)を無安打に封じ、通算9勝目をマーク。東北勢初Vを目指した光星学院の夢を砕いた。

 夏最後の勝ち星も、藤浪のものになった。9回2死一塁で大杉を152キロストレートで空振り三振。駆け寄る捕手の森を全身で受け止めた。一昨年の興南(沖縄)・島袋洋奨(中大)以来の春夏連覇投手が生まれた瞬間だった。

 「甲子園の長い歴史の中で、偉大な記録を残すことが出来てよかったです!」。校歌を歌い、目を潤ませた。お立ち台で、興奮した声を響かせた。「夏勝たなければ意味がない」と話した春とは、違う達成感があった。

 2日連続で2安打完封。大会4本塁打の4番北條は2三振を含む4打数無安打。150キロの快速球で追い込み、カットボール、フォークで仕留めた。大会2本塁打の田村からも2三振を奪った。1、2回はイニングをまたいで田村、北條を連続3球三振。出はなをくじいた。

 藤浪

 2人を抑えることが出来て、今までやってきたことを出せました。

 センバツ決勝で完投勝利も、2人には打ち込まれた。田村に3安打、北條には2安打2打点。頂点に満足せず、投球フォーム改良に取り組んだ。球速より球質、変化球の制球を上げようと下半身を使うフォームを心がけた。6月終盤、股関節に疲労性の張りが出た。理学療法士が「下半身を使えているからです」と教えてくれた。春に続いて夏も全登板で150キロ超え。9回先頭の代打・村瀬に自己最速タイの153キロの速球を投げ込んだ。光星学院という好敵手がいたから、最後まで最高の投球を貫けた。整列時、北條と「ありがとう」と声を掛け合った。

 チームメートが「マイペースで怒った顔を見たことがない」と証言するが、実は強い気性を隠し持つ。中学の体育祭でしつこく絡んできた相手と大ゲンカをしたこともあった。理不尽なことは許せない。だが「高校に入ってから怒った顔は見せていない」と藤浪も言う。認め合える仲間に巡りあえた。入学直後、レベルの高さに衝撃を受け、「背番号1は無理かも」と父晋さん(49)に明かした。だから197センチの大器は謙虚に着実に力を伸ばした。

 今秋ドラフトの目玉になったが、進路は「西谷先生と相談して決めます」と結論は持ち越した。昨年末の進路相談では西谷浩一監督(42)にプロ志望を伝えた。「来年のセンバツに出ることが出来たなら、人生を左右する大会になるよ」と言われた。春も夏も制し、恩師から「最後に一番いい投球を見せてくれた」と、ねぎらわれた。「いい投手より勝てる投手になれました」と胸を張った。すべての経験が、この日に続いていた。【堀まどか】