<センバツ高校野球:浦和学院5-1敦賀気比>◇2日◇準決勝

 決勝は済美(愛媛)対浦和学院(埼玉)に決まった。浦和学院は4番高田涼太内野手(3年)が、センバツ史上2人目の3戦連続本塁打で敦賀気比(福井)に快勝。同校初の決勝進出に導いた。3日の決勝は午後0時半プレーボール予定。

 細かい雨が降っていても観客のほとんどが空を見上げた。浦和学院・高田が放った滞空時間7秒の放物線を見るために。初回2死一塁。初球だった。狙い澄ました一振りで敦賀気比・岸本が低めに投じた111キロのスライダーをすくい上げた。「当たった感じが良かった」。打球はバックスクリーン左に飛び込む、大会タイ記録の3戦連続本塁打となった。

 センバツでの3戦連発は星稜・松井もPL学園・清原も達成していない。1大会での通算本塁打3本も両氏に並んだ。それでも当の本人は「記録に並んだというのは言われればうれしいですけど、チームの勝利が1番。たまたまって感じです」と、クールに話した。

 動じない心は日々の鍛錬で磨かれた。冬場は1日2000本の素振りを自らに課し、振り負けないスイングを身につけた。この日もチームの起床時間より30分早い4時に起床し、30分間黙々とバットを振った。そして6時から戦いへ向かう正座の時間を過ごした。選手全員が宿舎で正座をし、「戦いの覚悟が出来たら立ち上がる」という精神統一法で気持ちを奮い立たせた。

 初の決勝進出を決めた白星は、就任22年目の森士監督(48)にとって公式戦通算400勝の節目の勝利でもあった。指揮官は前日、今年の正月に決勝進出の初夢を見たことを明かした。「インタビュールームで明日が決勝戦なんだって思ってるの。勝っちゃったよ…、決勝の舞台立てるんだみたいな」。その夢を頼れる4番が現実に変えた。「高田は1球に対する集中力が高い。それにしても出来すぎだと思う」と笑みがこぼれた。

 甲子園20度目の出場で、悲願の優勝まであと1勝。済美・安楽について、高田は「ストレートを打ち返したい。楽しみたいというより倒したい」と意気込んだ。大宮工以来45年ぶり埼玉県勢優勝へ。夢を現実にする男の一振りが、きっとかなえてくれる。【島根純】

 ◆高田涼太(たかだ・りょうた)1995年(平7)5月11日、埼玉県生まれ。幼稚園年長で野球を始め、中学時代は和光第二の2年秋に軟式野球県大会で優勝。浦和学院では1年秋からベンチ入りし、昨夏の甲子園では三塁でレギュラー。好きな言葉は「継続は力なり」。憧れの選手は巨人阿部。右投げ右打ち。180センチ、77キロ。