<全国高校野球選手権:鳴門6-5修徳>◇15日◇2回戦

 うずしお打線が復活だ。鳴門(徳島)が修徳(東東京)にサヨナラ勝ちし、準優勝した50年以来、63年ぶりに夏2勝を挙げた。延長10回無死満塁の絶好機に、1回戦・星稜(石川)戦で満塁弾を放った松本高徳内野手(3年)が初球を左翼線に運び、競り勝った。

 「鳴門のジャイアン」と呼ばれる松本が、おいしいところを持っていった。延長10回無死一、三塁で、相手の修徳ベンチは満塁策を取った。歩かされた日下は「オレが決めたる!

 って気持ちやったのに」と残念無念。続く松本が初球、高めのスライダーを左翼線にはじき返し、県勢2本目の満塁弾を放った1回戦に続いて主役をさらった。

 「サヨナラ打は人生初。鳥肌が立ちました」。サッカー部が昨年12月31日の全国高校サッカー選手権で修徳に苦杯。北島中時代からの仲良しのサッカー部員が「1発かましてくれ」と頼んできた。「またホームラン打つわ」と約束したが、本塁打に劣らない千金打。森脇稔監督(52)が「今までの松本なら真っ青だったのに」と驚くほど好機に強いジャイアンに成長した。

 準優勝した50年夏、初優勝した51年春、準優勝の52年春と甲子園で渦を巻いた「うずしお打線」の復活だ。2回、高校25号の先制弾の4番・伊勢は「伝統のトンボスイングのおかげかな」。グラウンド整備用のトンボを持ち、腕の力でゆっくり振る練習を50~100スイング。例年冬場だけだが現チームは夏も継続。182センチ、87キロの伊勢でも「腕がえらい(疲れる)です」と明かす。冬場は山道、海岸などを連日3時間走って鍛えた足腰が、スイングを支える。さらに走者二塁を想定した実戦形式の打撃練習で、好機に必ず打つイメージ作りを続けてきた。

 アルプスは阿波踊りの2拍子でナインを盛り上げた。「あれで盛り上がりました。小学校でも中学でも習ったんで、踊れますよ~」と松本。ここまで来たなら勝たなきゃソンソンの、鳴門の夏だ。【堀まどか】

 ◆うずしお打線

 鳴門は初出場となった50年(昭25)の第32回大会で準優勝。当時の最高打率を更新したことから名付けられた。決勝までの5試合で64安打39点をたたきだし、打率は3割6分2厘を記録した。強打を武器に翌年51年の第23回センバツでは優勝。翌々年の第24回センバツでは準優勝した。