<全国高校野球選手権:花巻東7-6済美>◇17日◇3回戦

 花巻東(岩手)は今大会最も身長が低い156センチの千葉翔太外野手(3年)が、「千葉シフト」を打ち破る3安打で勝利に貢献した。

 花巻東の156センチの左打者千葉が、安楽攻略の突破口となった。2番打者で50メートル6秒の俊足。普段から打席で「いやらしい雰囲気を出したい」とファウル打ちを練習する。初戦の彦根東戦では3回に7度ファウルを打つなど、1人で34球を投げさせて3安打した。そんな千葉に済美・上甲監督が用意した奇策は「内野5人シフト」。試合前予告した通りの守備に、満員の甲子園スタンドはざわめいた。

 「そういう作戦をするとは聞いてました」。初回1死走者なしで打席に立った千葉は動じず、奇策をあざ笑うかのように143キロ直球を捉えた。打球は5人いる内野を抜けセンター方向へ。あわてて右中間にいた右翼手が捕球した。

 4打席目の7回には「ライトが空いてたので狙った」と打球を引っ張り右越え三塁打。打球は誰もいない外野を転々とし、マウンド上の安楽を苦笑いさせた。「千葉シフト」が解除された延長10回にも甘く入ったスライダーを捉え、中前打で勝ち越しのチャンスを作った。身長差30センチの安楽攻略に成功し、「大きい相手には負けたくなかった」。佐々木洋監督(38)も「本当は4番みたいな打撃ができる子なんです」とたたえた。

 対戦が決まってからはマシンを150キロに設定した上で、プレートから約4メートル前に置き、速球に目を慣らしていた。昨年は1つ上の先輩、日本ハム大谷に打撃投手になってもらった経験もある。安楽の直球も「速くは感じなかった」と千葉。この日は1番から6番まで左打者を並べ11安打7点を奪った。延長10回勝ち越し打を打った6番小熊は148キロの直球を捉え試合を決めた。

 佐々木監督は「雄星、大谷もいないのに、選手たちには感謝している」。大会NO・1投手を打ち崩したスター不在軍団が、09年以来の4強進出を目指す。【高場泉穂】