<高校野球春季福島大会:小高工2-0福島商>◇19日◇2回戦◇天狗山球場

 小高工の大型右腕菅野秀哉(3年)が、福島商を9回13奪三振で完封した。プロ10球団16人のスカウトが見守る中、本調子ではなかったものの183センチから投げ下ろすストレートを中心に4安打に封じ込めた。チームは2-0で勝ち、昨年に続いて8強入りした。

 小高工・菅野の成長が凝縮された完封だった。3月に左翼の守備で腰を痛め、4月の練習中に右足首を捻挫し、相双地区大会では2イニングを投げただけ。投げ込み、走り込み不足で「まだ60%の状態」(菅野)で13三振を奪った。

 決め球のフォークが落ちず、速球中心に切り替えた。阪神スカウトのスピードガンは最速にあと1キロの141キロを計測。内野ゴロも詰まらせた打球が多く、福島商の菅原裕一監督(45)は「ストレートを狙っていたのに打てなかった」と脱帽した。

 昨春県3位、夏4強の原動力になった右腕は、自ら「食の細いタイプ」という。冬場から1日5合の白飯を平らげ、筋力トレに励んだ。峯岸聡監督(34)は「球の回転が良くなった」と評価する。体重は1年前に比べ6キロ増の75キロになり、60キロが限界だったベンチプレスは75・5キロまで挙げられる。本調子ではなくても球威が増したことで好投した。

 「最低でも東北大会」と菅野は目標を口にする。昨春の東北大会は、初戦で盛岡大付(岩手)に10安打9失点、7回コールドで敗れた。「打者のスイングが違う」とレベルの差を痛感してから1年。最後の夏を前にもう1度春の大舞台に立つ。【久野朗】

 ◆菅野秀哉(かんの・しゅうや)1996年(平8)7月8日、福島県相馬市生まれ。小3の時、地元の桜ケ丘レッドイーグルスで野球を始め遊撃手。中村一中3年で本格的に投手となり、東北大会出場。小高工では1年春からベンチ入り。2年春から背番号1。家族は両親と姉、兄。183センチ、75キロ。右投げ右打ち。血液型B。