<高校野球愛知大会:東邦4-2栄徳>◇31日◇決勝◇岡崎市民球場

 ラスト切符は「バンビ2世」がもたらした。東邦が栄徳を破り、6年ぶり16度目の出場を決めた。先発の藤嶋健人投手(1年)が11三振を奪い、2失点完投。77年夏準Vに導きバンビの異名を取った坂本佳一と同じ1年生右腕の活躍が原動力になった。これで甲子園大会(8月9日開幕)の49代表校が出そろい、6日に組み合わせ抽選会が行われる。

 バンビ2世が躍動した。東邦・藤嶋が最後の打者をカーブで二ゴロに打ち取ると、ナインがマウンドに駆け寄った。先輩たちにもみくちゃにされた1年生右腕が夏空に両腕を突き上げる。「勝った瞬間、体中がぞくぞくしました。人生で一番うれしかった」。あどけない笑みがはじけた。

 初の甲子園を狙う栄徳は、愛工大名電、中京大中京にいずれも完封勝ち。5回には適時打三塁打を浴びて先制された。だが「峰さん(捕手)は自分の投げたいボールを投げろと言ってくれた。自信のボールで打たれても納得がいく」とショックを引きずらなかった。なお1死三塁。スクイズはスピンの利いた高め直球で3バント失敗に仕留め、追加点を与えなかった。直後、溝口慶周外野手(2年)が逆転3ラン。藤嶋は8回の反撃も1点に抑え、7安打されながら11三振を奪う力投だった。

 5回戦では今春センバツ4強の豊川に3失点完投。背番号は「10」だが、森田泰弘監督(55)も絶大な信頼を置く。投手は大井友登(3年)山下雅善(2年)らがいるが、練習試合の登板内容から「6月に、この決勝戦は藤嶋と決めていた」と森田監督は明かした。

 東邦の1年生投手といえば、77年夏の甲子園で準優勝に導いた坂本が有名。マウンドで躍動する姿からバンビと呼ばれた。藤嶋は「(坂本と)比べられて、うれしい。最初の甲子園なので精いっぱい楽しみたい。目標は全国制覇」と声を弾ませた。【上田博志】

 ◆藤嶋健人(ふじしま・けんと)1998年(平10)5月8日、愛知県豊橋市生まれ。小学2年から栄ドリームズで野球を始め、中学では東三河ボーイズに所属。直球は最速144キロ、スライダー、カーブも投げる。家族は両親と兄。175センチ、77キロ。右投げ右打ち。

 ◆「バンビ」

 東邦が77年夏に甲子園準優勝した際の1年生エース坂本佳一氏のニックネーム。背番号1を背にスリムな体形でけなげに投げる姿が共感を呼び、いつしか「バンビ」という異名が日本中に広がった。初戦(2回戦)の高松商(香川)戦から決勝の東洋大姫路(兵庫)までの5試合を1人で投げ抜いた。決勝は延長10回にサヨナラ本塁打を浴び力尽きた。

 ◆東邦

 1923年(大12)東邦商業学校として創立した私立校。48年、現校名に。生徒数は1751人(女子958人)。野球部は30年(昭5)創部。部員100人。甲子園はセンバツに27度出場し4度優勝。夏は77年準優勝が最高。主なOBに俳優の奥田瑛二、中日朝倉、岩田、DeNA関根ら。名古屋市名東区平和が丘3の11。長沼均俊校長。◆Vへの足跡◆3回戦10-2名古屋市工4回戦4-3豊橋工5回戦6-3豊川準々決勝11-1大府準決勝8-1豊田西決勝4-2栄徳