<全国高校軟式野球:中京3-0崇徳>◇8月31日◇準決勝◇明石トーカロ

 スタンドから響く広島特産しゃもじの音色が疲れきった体を励ましていた。50イニング689球3失点完投。中京・松井に負けない気力で崇徳・石岡樹輝弥(じゅきや)投手(3年)も4日間を投げ抜いた。右肩に痛みを抱え、体は悲鳴を上げていた。50回無死一塁で投前バントを処理し、二塁に投げたが「体が言うことを聞いてくれなかった」。送球がそれ、無死満塁につながった。相手主将の後藤敦也(3年)に直球を右翼線に落とされ、勝負は決まった。それでも「楽しい試合でした」と振り返ることができた。

 前日8月30日の夜、兄史亘さん(26)の携帯電話に「樹輝弥、えぐいじゃん」のメールが届いた。広島経大時代の友人で石岡のことも知るソフトバンク柳田から。プロも驚く活躍を続けた右腕は、同31日の登板も直訴。だが体を気遣う中河和也監督(30)に「重松でいく」と却下された。するとエース重松勝実(同)が「石岡に投げさせてやって下さい。ぼくは決勝で頑張ります」と訴えてきた。

 「松井がいたからここまで投げられた」と石岡は試合後、相手エースと抱き合った。「優勝してくれ」と託し、決勝はスタンドで応援。約束を果たした松井に「自分も全く同じ気持ち。石岡君がいたから投げられた」の言葉をもらった。熱闘が生んだもう1人の主役だった。【堀まどか】

 ◆石岡樹輝弥(いしおか・じゅきや)1996年(平8)6月19日、広島市安佐南区生まれ。安(やす)小4年から「安佐クラブ」で投手兼遊撃手として野球を始める。安西(やすにし)中では軟式野球部に所属。崇徳では1年夏からベンチ入り。直球の最速は130キロ。167センチ、57キロ。右投げ左打ち。