<センバツ高校野球:北大津3-2東北>◇22日◇1回戦

 ダルビッシュ先輩、夏こそは勝ちます-。4年ぶり18度目出場の東北(宮城)が2-3で北大津(滋賀)に敗れた。4回に6番立花幸平一塁手(3年)の左中間二塁打で先制、5回には3番萩野裕輔投手(3年)の右前打で2点をリード。パ・リーグ開幕戦で完封勝利を挙げた偉大な先輩に続け-とばかりに、エース左腕萩野が10三振を奪う力投を見せたが終盤に乱調。守備の乱れもあり、まさかの逆転負けを喫した。初戦敗退の屈辱は、夏に晴らす。

 今大会屈指の左腕が、突然の悪夢に襲われた。終盤の7回。連続三振で簡単に2死を取った後に死球を与えると突如、ボールが先行する。暴投、ストレートの四球で一、二塁とされ、続く9番岡田に適時打を浴びた。歯止めは利かない。8回も制球が甘くなり、2長短打に味方のエラーも絡み逆転された。

 異変はそれより前に、本人が気付いていた。「中盤から右腕の開きが早くなってしまった。開いていると球が低めに落ちていく。うまく修正できなかった」と淡々と話す萩野。132球で完投も、早すぎる敗退に「スタミナ不足です」とも振り返った。

 リニューアルした甲子園で「新しい萩野」を見せきれなかった。冬場からフォームを変え、左腕のバックスイングをヒジから小さく上げるよう修正。「左は問題なかった」(萩野)が、右腕とのバランスが取れていなかったようだ。五十嵐征彦監督(32)は「フォーム改造もまだ中途で、完全ではなかった」と語った。

 それでもプロ注目の左腕らしさは見せた。8回まで毎回10奪三振。2回には、この日最速140キロを計測した。楽天上岡スカウトは「フォームうんぬんより、打者を見て投げられるようになってきた」と成長ぶりを評価。巨人大森スカウトは「秋よりスピードは出てる。後はもう少し(球速を)持続すれば」と語った。

 宮城・館(やかた)中時代は軟式野球部所属。近年の名門校のエースでは珍しい。父順さん(48)が、成長途中の萩野の体を考慮したためだ。スタンド観戦した順さんは「体ができるまで軟式でいいだろう、と。本人は不承不承でしたが」と苦笑いした。

 硬式は高校から始めた。タテジマの甲子園があこがれだった。グラウンドのある泉キャンパスに隣接する館小時代から、東北の練習を見詰めた。ダルビッシュ有(日本ハム)もいたが、同じ左腕の高井雄平(ヤクルト)に何度も話しかけたという。

 その高井からは前日、電話で「とにかく頑張って、楽しんでこい」と激励されていた。初めての聖地で無念の逆転負け。「楽しくできたけど負けて悔しい。一生懸命やって、また夏に来たい」と萩野。残されたあと1度の甲子園を、リベンジの舞台にする。【清水智彦】