<センバツ高校野球:北照2-0秋田商>◇28日◇1回戦

 記録ずくめの1勝だ!

 北照が秋田商(秋田)を下し、北海道勢春夏通算100勝目のメモリアル勝利を挙げた。エースで4番の又野知弥(3年)が投打に大活躍した。投げてはスライダーを武器に被安打5、10奪三振で完封。バットでも初回、左中間にソロ本塁打を放った。2ケタ奪三振の完封勝利は、道勢では60年春の北海・佐藤進投手以来50年ぶり2人目。道勢5年ぶりに初戦を突破し、勢いに乗る北照は、30日の2回戦で優勝候補の東海大相模を破った自由ケ丘(福岡)と対戦する。

 まさにワンマンショーだった。北照のエース又野が、仁王立ちしたマウンドで秋田商打線を5安打に抑え、奪三振は10個、積み重ねた。「1球1球に気持ちを込めました。まだ甘い球があったので80点」。自己評価は満点ではなかったが、ヒーローだけの特権となる、甲子園通路のお立ち台で会心の笑顔だった。

 完封劇は、河上敬也監督(50)の「飛ばしていけ!」というゲキで始まった。186センチの長身で、ゆったりとしたフォームから重い直球で押した。初回に自己最速を更新する142キロをマーク。さらに得意のスライダーで三振を量産。甲子園の電光のスコアボードに「0」を並べた。

 堂々の106球。4回1死三塁では2者連続三振、9回無死二、三塁のピンチにも内野ゴロ3つと動じなかった。甲子園の完封勝利&2ケタ奪三振は、北海道勢では60年春の準々決勝で、のちにプロ入りした北海の佐藤進以来。無失策の守備陣にも助けられ、楽天田中将大が駒大苫小牧時代になし得なかった完封を初舞台でやってのけた。

 4番、主砲としての仕事も十分だった。1回、捕逸で1点リードした場面、カウント2-1と追い込まれながら高めの122キロを強振した。秋田商の左腕須田から甲子園の最深部、左中間スタンドにソロ本塁打をたたき込んだ。春甲子園では道勢7年ぶりとなる値千金の1発は、自身公式戦通算9本目。「完封と本塁打はうれしい」と素直に喜んだ。

 甲子園を目指し函館から北照に進学。函館東シニア時代にマスターしたスライダーをさらに磨いてきた。13日の練習試合(対関大北陽)で球審を務めた、関西地区で審判歴40年以上の日笠隆勝さん(70)が「私が見た中でここ10年では、一番ええスライダーをほうる。高校生には打てない」とうなったほど。奪三振10個のうち9つは最大の武器スライダーで仕留めた。

 道勢5年ぶりのセンバツ甲子園勝利は、道勢の春夏甲子園100勝のメモリアルにもなった。河上監督は「打つべき又野がよく打って、守るべき又野がよく投げた」と主戦を絶賛。次戦は8強入りをかけ、30日第3試合(午後2時開始予定)で自由ケ丘(福岡)と激突する。又野は「次の試合は100点を目指したい。優勝を目指します」と、短い言葉に思いを込めた。春はまだ達成していない夢、紫紺の大優勝旗どりを口にした。【中尾猛】