<高校野球長崎大会>◇12日◇1回戦

 九州屈指のスラッガーが、昨春の王者を打ち砕いた。長崎大会は12日、夏の甲子園15回出場の海星と昨年のセンバツを制した清峰が1回戦で激突した。海星は2回、プロ注目の江越大賀外野手(3年)が、左越えに先制2ラン。これで勢いづき、11-8の壮絶な打撃戦を制した。

 長崎大会1回戦屈指の好カードを注目したのは、県民だけではなかった。降りしきる雨の中、全12球団のスカウトが集結。目当ては海星の江越だ。プロ注目のスラッガーは2回、最初の打席で、足を運んだスカウト陣を満腹にさせた。

 無死一塁でフルカウントの6球目。「狙っていた」スライダーを振り抜くと、打球は左翼席中段に届く高校通算26号。春から追う阪神の田中スカウトは、そのスイングに成長を見た。「春ごろは体の力はあるが、スイングがもうひとつという感じ。本塁打を打ったスライダーでも、春なら空振りしていた。よくなってきている」。高校生外野手ではトップ級の評価だ。

 その後の3打席、いずれも走者を置いて一塁が空いた場面で歩かされた。「初めてのことだったので、集中力を切らさないようにとだけ考えていました」。打つだけではない。7回には2死一、三塁でディレードスチールを仕掛け、10点目を奪取。清峰が猛反撃した終盤8回に中堅で好守を連発し、投手をもり立てた。

 夏の大会15回出場の名門も02年以降、甲子園から遠ざかる。「冬から甲子園を目標にして、きつい練習を頑張ってきた」と江越。夢舞台に向かって、打ち続ける。【実藤健一】