メッツのワールドシリーズ進出が決まり、ニューヨークが久々に野球のポストシーズンで盛り上がっている。メッツがワールドシリーズに進出するのはヤンキースとのサブウエイシリーズとなった00年以来15年ぶり。ヤンキースは09年に世界一となったので、ニューヨークにとってのワールドシリーズは6年ぶりだ。

 これまで、いずれのチームもポストシーズンに進出しなかった10月のニューヨークというのを何度も体験したが、それはもう寂しいものだった。スポーツバーにプレーオフの試合を観に行っても、中継を流しているテレビはほとんどなく、NBAやNHL、カレッジフットボールの中継ばかり。スポーツラジオをつけると、ヤンキースやメッツの話は一切出てこない。街はもうすっかり野球のことを忘れ他のスポーツに熱を上げていた。

 そんな時期を経たからこそ、今年の盛り上がりは大変なものだ。メッツ本拠地シティフィールドで行われる第3、4、5戦の入場券は、野球の試合としては史上最高額の1試合平均約1660ドル(約20万円)に高騰している。テレビ中継は、全試合が米東部時間午後8時台のプライムタイムに開始され、これはワールドシリーズ中継では史上初。メッツのチームグッズも飛ぶように売れており、ミッドタウンのスポーツ用品販売店ではワールドシリーズ進出が決まったその夜、午前2時までグッズを求めるお客さんが並んだという。

 ポストシーズンフィーバーの影響で、今やメッツのテリー・コリンズ監督(66)は地元ファンの間でカリスマ的ヒーローとなり、ファンから抱きつかれたりキスをされたりと大変なモテようだ。07~08年のオリックス監督時代にはフロントや選手と対立し、お世辞にも好感度が高いとはいえなかった同監督。それが選手、メディア、ファンのすべてからもてはやされているのだから、ワールドシリーズの影響力というのは、すさまじい。

【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)