WBCに出場する選手が一時的にチームのキャンプ地を離れていく場面を何度か見かけたが、メジャーの球団はかつてよりWBCに協力的になったのではないだろうか。

 マーリンズ、アストロズ、ヤンキースに取材に行ったが、少なくともこの3球団は協力的な印象だった。マーリンズは本拠地球場のマーリンズパークを1次ラウンドの開催地として提供していることもあり協力的なのは当然なのだろうが、アストロズは日本代表の青木宣親外野手がWBC向けの調整をすることを積極的に手助けしていた。代表合流の時期が他のWBC組より早くオープン戦最初の2試合しか出場できないという青木のためにその2試合に優先的に出場させ、代表では中堅を守ると聞いてオープン戦で中堅に慣らす機会を与えた。オープン戦のその2試合はいずれも遠方の遠征試合だったため、青木をチームバスで往復させずに遠征先で1泊させる配慮もするなど、至れり尽くせりだった。

 ヤンキースは、ドミニカ共和国代表のデリン・ベタンセス投手、オランダ代表のディディ・グレゴリアス内野手、米国代表のタイラー・クリッパード投手、イタリア代表のトミー・レイン投手と傘下のマイナー選手合わせて7人がWBC出場のためキャンプを離脱した。ジラルディ監督は「選手たちが(故障などしないか)多少心配だが、彼らは自分たちの調整の仕方を心得ている。我々の仕事は、彼らが試合に出られる準備ができるよう手助けすることだ」とし「マイアミ、メキシコ、アジアとそれぞれ行き先も違い、米国時間の早朝の試合に出場する選手もいるが、何時だろうと観るつもり」と話していた。本音では気が気ではないのかもしれないが、WBCに出場するためオフシーズンに早めに始動しなければならない投手には早い時期から投球プログラムを与え、後押しした。

 出場する選手たちはみな、国の代表ユニホームを着て戦うことを楽しみにしている。米国代表のクリッパードは「学生時代の全米代表や五輪代表にも選ばれたことがなかったから、一度は代表になりたいと昔から思っていた」という。メジャーの選手の中にはWBCに興味を示さない選手もいるが、参加する選手にとっては意味のある大会。球団のサポート環境が整ってきたことは、いい傾向ではないか。

【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)