メジャーの公式戦も佳境を迎え、プレーオフ争いも最終段階に入っています。言うまでもなく、どのチームもワールドシリーズ(WS)制覇を最終目標にしているわけですが、メジャー30球団の頂点に立つまでの道のりは、周囲が考える以上に険しいものです。

 イチローが所属するマーリンズは、夏場までワイルドカード争いで好位置につけていましたが、8月下旬から11戦10敗と大失速。154試合目(9月23日終了時)で借金「2」と、プレーオフ進出は絶望的な状況になりました。

 とりわけガッカリしているのは、就任1年目のドン・マッティングリー監督です。同監督といえば、現役時代、ヤンキースひと筋でプレーし、主将としてリーダーシップを発揮。MVP1回、オールスター6回、ゴールドグラブ9回を獲得した実績を持つスター選手でした。ところが、不思議なことに、これまで1度もWSの出場経験がないのです。

 1982年にメジャーデビューし、95年に現役を引退するまでの14年間はヤンキースの暗黒時代で、WSどころか、地区優勝もなく、プレーオフにも進出していません。04年以降、ヤンキース、ドジャースのコーチを務めた7年間、さらに監督(昨季までドジャースで5年間)としても、通算6年目で依然としてWSの舞台を踏んでいません。

 その一方で、マッティングリーと入れ替わるようにデビューしたデレク・ジーターは96年以降、WSに7回出場し、14年の引退までに5個のチャンピオンリングを手にしました。日本人では田口壮(カージナルス、フィリーズ)の2個をはじめ、井口資仁(ホワイトソックス)、松坂大輔(レッドソックス)ら多数の選手が世界一リングを手にしていますが、彼らは限られた存在。メジャー全体からすれば、リングどころか、WS未出場の選手の方が断然多いのです。

 今季も夢破れそうなマッティングリー監督は、しみじみと言っています。

 「ワールドシリーズは、野球界のだれにとっても明確なゴール。今は長い旅の途中なんだ」

 最多本塁打記録を持つマーリンズのバリー・ボンズ打撃コーチにしても、ジャイアンツ時代の02年、WSにコマを進めましたが、第7戦で敗戦。リングには届きませんでした。日米通算でピート・ローズの記録を抜き、メジャー通算3000本安打を達成したイチローも、リーグ優勝決定シリーズ止まりで、WSには出場していません。

 来季の布陣は決まっていませんが、マッティングリー、ボンズ、イチローの「名選手」が、一緒にWSへ出場し、さらに世界一リングを手にする日は来るのでしょうか。

【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「メジャー徒然日記」)