【ルイビル(米ケンタッキー州)27日(日本時間28日)=鉄矢多美子】速すぎる!

 ヤクルト由規投手(20)が日本人最速161キロをマークした2日後、「世界最速」投手が誕生した。キューバから亡命し、今季からレッズ傘下3Aルイビルでプレーするアロルディス・チャプマン投手(22)がコロンバス戦で、なんと球速105マイル(約169キロ)をマークした。スピードガン普及後、記録に残るものでは米国内でも最速とみられる。快速左腕は近日中にもメジャー昇格が予想され、ナ・リーグ中地区首位レ軍の秘密兵器としてデビューする。

 ルイビルの本拠地「ルイビル・スラッガー・フィールド」に歓声とどよめきが起きた。インディアンス傘下コロンバス戦の1-1の9回表2死。この回からマウンドに上がり、最初の2者から連続空振り三振を奪っていた守護神チャプマンは、6番マクブライドへの4球目に、なんと105マイル(約169キロ)の直球を投げ込んだ。

 球場のスコアボードだけでなく、バックネット裏のスカウトたちのスピードガンもそろって「105マイル」を表示。スイート監督も「初めて見たよ。スカウトのガンも同じだと聞いたから、正真正銘105マイルだ」と世界最速記録に太鼓判を押した。チャプマンは、この球こそファウルされたが、5球目の104マイル(約167キロ)直球で3連続空振り三振に仕留めた。5分56秒の「チャプマン・ショー」。試合後は「105マイルは人生で初めて。とてもうれしい」と大喜びだった。

 09年7月にオランダ遠征中のキューバ代表チームを飛び出し、欧州の小国アンドラに居住権を確立。FAとしてレッズと6年(10~15年)3025万ドル(約25億7125万円)の大型契約を結んだ。

 当初は先発として育成されていたが、圧倒的な球速を見込まれて今季途中からクローザーに転向。先発では5勝5敗、防御率4・11だった成績も、抑えとしては4勝1敗、防御率2・40と劇的に向上。三振も30回で49個奪っている。本人も「今はクローザーとしての仕事もやりがいを感じている」という。

 チャプマンは近日中にもメジャー昇格を有力視されている。ナ中地区首位レッズは、ここ6年で4度地区優勝している常勝カージナルスと激しい争いを繰り広げてきた。だが、ここに来て4ゲーム差と徐々に差を広げつつある。チャプマン昇格で一気にプレーオフ進出へ弾みをつけたいところだ。

 ただ105マイルという前代未聞の数字に、米メディア内では「球団は本当に105マイルまで出してほしいと思っているのか」と、肩・ひじを心配する声まで出始めた。余計なお世話といえばそれまでだが、100マイル右腕ストラスバーグは2度の故障者リスト入り後、手術が必要となってしまった。それだけに球団もチャプマンに対し、目先のプレーオフ進出にとらわれない、さらに慎重な起用法を用意する可能性もある。

 日本人投手では26日にヤクルト由規が161キロを出したばかり。人類の限界はどこにあるのか。球速170キロ突破は可能なのか。チャプマンのボールから目が離せなくなってきた。