平成の怪物が9年ぶりの日本再デビューで本気になった。ソフトバンク松坂大輔投手(34)が因縁深い甲子園で阪神戦に先発。3回を4安打無失点にまとめ、オープン戦とはいえ幸先よい日本復帰初白星を飾った。久しぶりの実戦に緊張感から本来の調子ではなかったが、3回にピンチを迎えるとギアチェンジ。最速146キロをマークするなど力でねじ伏せた。

 3回に突然、松坂のスイッチが入った。4番ゴメスの初球に二盗を許し2死二、三塁となったところで、闘争心に火が付いた。「走者が出て、簡単に打たれたくないですし、走者が出てから抑えることを意識した」。それまで142キロが最速だった直球のスピードが増した。ゴメスにはこの日最速の146キロ直球が外れて満塁にしたが、続くマートンには145キロのど真ん中で勝負し、詰まった遊ゴロに打ち取った。

 「ギアチェンジをしたのか」。そう問われた松坂は「それもあると思います」と認めた。「投げていくうちにだんだんと重心が下におりてきた。強く腕を振れる感覚が出てきた」。気持ちが乗ったのと同時に、キャンプで取り組んできた下半身を使ったフォームもイメージ通りになった。

 毎年、初実戦は「フワフワとした気持ちになる」という。日本復帰で注目される今年は、高校時代に数々の伝説を残した甲子園。怪物を歓迎するように偶然も重なった。前日の雨の影響で試合前の打撃練習は室内で行われた。練習中、誰も手をつけていないマウンドに松坂はゆっくりと上がりプレートからの歩幅を数え、周囲を見渡した。「見え方や高さを確認しました。久しぶりできれいになっていた。でも変わらないですね。広さとかはやっぱり甲子園でした」。そんな思いもフワフワ度を高めたのかもしれない。

 1回は2死から西岡を歩かせた。直球のスピードも上がらず2回は先頭から直球を連打された。「1、2回はキャッチボールの延長くらいだった。僕の中では参考にならない。3回にやっと投球らしくなった」。

 最後に本性をむき出しにし、予定の3回を無失点。カットボールとフォークは使わなかった。阪神にエンドランや盗塁を仕掛けられ日本の細かい野球も思い出した。まだ調整段階。工藤監督は「よかったよ。任せておけば大丈夫」と心配していない。

 次回は中6日で11日巨人戦(ヤフオクドーム)が濃厚。順調に登板を重ねれば、開幕2カード目のオリックス戦、優勝争いライバルとの3連戦に登板する。メジャー帰りの平成の怪物が再デビュー戦で、その力をちらりと見せた。【石橋隆雄】