2つの武器を携えてシーズンに臨む。広島の大瀬良大地投手(23)はウエスタン・リーグ中日戦に先発し、6回2/3を7安打2失点。黒田直伝のツーシームを多投し、1軍経験者も並ぶ中日打者を詰まらせた。昨季はなかったフォークに続く新たな球種を自分のものにした。急成長する右腕には2年目のジンクスの不安など見当たらない。

 シーズン前の最終登板を新球テストと位置づけた。大瀬良は立ち上がりからツーシームを多投。2000安打目前の和田や野本、松井佑ら1軍経験のある打者が並ぶ中日打線は絶好の相手。松井佑を2打席目に見逃し三振、3打席目に遊ゴロに打ち取った球はいずれも新球ツーシームだった。右打者の内角に食い込む球を有効に使い、投球にリズムが生まれた。6回まで許した走者は不運な当たりと守備のミスによるもの。球数が100球に達した7回に3連打から2失点したものの、テンポのいい投球は助言の主、黒田をほうふつさせた。

 「思ったよりも早く使えるようになった。すごく力になってくれる球種だと思う」。大きな収穫を得た右腕に自信がみなぎった。

 黒田から伝授された3月1日からのスピード習得となった。当初はフォークを習得中だったこともあり、「シーズン中に使えるようになれば」と話していた。考え方を変えたことで好転した。「厳しいコースに投げようとしないで、真ん中でも自然と厳しいところに曲がってくれる」。本格試投から2試合、助言から1カ月もかからずに自分のものにしてみせた。

 大瀬良は昨季、直球と3種類の変化球で10勝を挙げ、新人王を獲得した。2年目のジンクスがささやかれるシーズンを前に「全ての面で昨年の自分を上回らないといけない」と決意。下半身強化や新球習得に励んできた。この日直球は最速149キロを計測。ツーシームだけでなく、1つめの新球フォークでも空振り三振を奪うなど完成度が高まった。昨季から取り組んできたことは、確実に実を結んでいる。

 実りある最終調整にも「7回に甘くなった球があった。1球の怖さを勉強させられた」と2点適時二塁打となった失投を悔やんだ。成長を続けながらも、反省を忘れない。進化する右腕に2年目の死角は見当たらない。【前原淳】