守備の職人が、打撃で必殺仕事人と化した。楽天藤田一也内野手(32)が、今季初勝利の立役者となった。2回2死一、二塁で中前適時打を放つと、4回無死二、三塁では右犠飛を放ち2打点の活躍。恐怖の9番打者の勝負強さが心強い。

 バットが素直に出る。打席での余裕が、今の藤田にはある。2回の中前適時打は、武田勝の外角直球を逆らわずにセンター返しした結果だった。「相手のワイルドピッチで1点入っていたんで、楽にいけました」。ファーストストライクを一撃で仕留めてみせた。

 この2日間で得点圏での打席が4度あった。その全てで仕事をした。2安打と2犠飛で3打点。ここまで得点圏打率10割と勝負強い。「たまたまですけど、チャンスでまわって来る。それをかえせているのはいいことだと思う」と、手応えを感じている。

 昨年は得点圏打率2割6分2厘。犠飛は2本で、犠飛だけなら昨年の数に並んだ。スイングの鋭さと力強さが増しているのも、しっかり犠飛を打てる理由だが、藤田にはもう1つの理由がある。「去年、日本一から最下位に転落して、ファンに申し訳ないと思っている。悔しい思いをさせている。秋にチャンピオンフラッグを手に、みんなで喜びを分かちあいたい」。選手会長としての責任感が力になっている。

 昨年までは2番での起用が多かった。今でも上位打線で打ちたい気持ちはあるが、チームのために私欲は捨てる。「8番の嶋が結構出塁するので、9番でも2番みたいな仕事もできる」。時にはチャンスメーク、そしてチャンスを広げる仕事をこなしながら、チャンスでは決定打を放つ仕事をしてみせる藤田。下位に、仕事人がいるのは相手から見れば厄介だろう。

 初勝利後のミーティングは大久保監督の「これからどんどん勝っていこう」というかけ声で盛り上がった。藤田も「まだ2試合なので、もっとやっていかないといけない。いい形でシーズンのスタートが切れるように、勝って仙台に戻りたい」と、気勢を上げた。【竹内智信】