日本ハム大谷翔平投手(20)が球団の開幕投手では26年ぶりの3戦3勝で、早くもハーラー単独トップに躍り出た。ソフトバンク2回戦で7回を2安打無失点、9奪三振。今季初の最速160キロの大台をマークする圧倒的なパフォーマンスで、0封勝利へ導いた。過去5度大役を務めたダルビッシュ(レンジャーズ)でも、果たせなかった連勝街道。3年目の躍進の予感は本物だ。

 のんびりとスタートを切り、スイッチを入れた。大谷の3勝目へのヤマ場は、また初回だった。内野安打に連続四球で無死満塁。「慣れてきたらダメなんですけれど…」と、バツが悪いのも当然だった。前回4日オリックス戦も1回1死満塁を招いて一挙2失点。大ピンチでも、思考は澄み切っていた。「まず1アウトを取ること。そこを取れれば(次打者で)ゲッツーとか見えてくる」。迎えた好打者・内川で、心身が乗りモデルチェンジした。

 初球から5球連続150キロ超。真っ向勝負で2-2と追い込んだ。ファウル2球で打ち損じを誘い優位に立ち、外角低め156キロで見逃し三振。続く李大浩は一直併殺。「紙一重でしたけれどね」と苦笑も、2回からは完全に相手打線を制圧した。「意識して三振は取りにいっている」と中軸に3四死球も計4三振、無安打。我慢比べの投手戦を111球の力技で制した。

 開幕投手を務めて3戦3勝は、日本ハムでは89年5戦5勝の西崎以来。敬遠する投手が多い地方球場では1年目から計4試合、この日で22イニング連続無失点と無類の強さだ。「あまり好きじゃない。マウンドが軟らかかったりするので。相性はいいですけれど」と謎めいているが、根源の1つにブレない素顔がある。常に一定のずぶとさ。栗山監督が時に「スットコドッコイ」と評する、持って生まれた「鈍感力」だ。

 この日も試合前に発揮し、周囲に緊張感を走らせた。メンドーサの肩の動きを確認するメニューに興味津々で、なぜか実践しようと画策。「(肩が)抜けるかもしれない」と関係者にたしなめられ、危険性に気付いて断念したという。前日11日の同戦で今季初黒星の先輩の上沢には「ご愁傷さまでした」と手を合わせ、あいさつ。無邪気に据わった肝っ玉が局面で効いた。

 不思議なパワーはパフォーマンスにも転化。7回の松田にファウルさせた4球目。降板直前の105球目に、今季初の大台160キロをマークした。薄氷の接戦勝利にも「嫌な感じはしなかった」と、ハートのポテンシャルも高い。投球内容も繊細だったダルビッシュとは違う魅力を放つ、大谷のおおらかさ。山あり谷ありの「二刀流」で、新しいエース像を極めていく。【高山通史】

 ▼大谷が7回を0点に抑えて3連勝。これで地方球場では13年8月18日帯広1回0点、14年5月13日函館9回0点、同7月16日旭川5回0点、15年4月12日熊本7回0点と、通算22回を投げて1点も取られていない。開幕戦から3戦3勝の開幕投手は14年の菅野(巨人)と小川(ヤクルト)以来で、日本ハムでは89年に5戦5勝した西崎以来、26年ぶり。大谷は開幕時に20歳8カ月。2リーグ制後、21歳未満の開幕投手が3戦3勝は54年石川(中日=開幕時20歳5カ月で6戦6勝)に次いで2人目となり、パ・リーグでは初めてだ。