虎が上昇気流に乗り切れない。4連勝を飾って乗り込んだ東京ドームでの巨人戦に連敗。3回に無死満塁の攻撃も犠飛による1点止まり。ルーキー高木勇人投手(25)に土をつける絶好機を逃し、まさかの逆転負けだ。巨人戦2勝6敗で敗戦試合はすべてポレダ、高木勇の先発ゲーム。イライラの募る展開で、借金3に後退してしまった。

 マウンドから引きずり降ろすことはできなかった。高木勇との第3ラウンドはパンチを浴びせながらも、逃げ切られた。開幕から無傷5連勝、新人右腕のインタビューが場内に流れる中で和田豊監督(52)は深く息をついて言った。

 「3回だよな。ノーアウト満塁で1点しか取れなかった。きょうは高木も過去2回ほどはよくない中で、しっかりと見極めながら塁には出たけどね。あそこで、もう1、2点取って完全に流れを持ってこないといけなかった」

 ポイントに挙げたのは1点リードで迎えた3回無死満塁だった。4番ゴメスが浅い二飛に倒れると、続く福留の犠飛で追加点を奪ったが、なお二、三塁でマット・マートン外野手(33)が投ゴロに倒れた。KOチャンスを逃した。先制の2回、追加点の3回、そして同点の5回とスコアボードに刻まれたのは最少の1点ずつ。とどめを刺せず、先に致命打を浴びたのは自軍の能見だった。

 試合後、チームバスが出発した後、最後にロッカーを出てきたマートンはイライラを爆発させるように何事かを叫んだ。

 「×●▲□!」

 猛虎のフラストレーションを象徴するように、周囲を寄せつけない空気だった。これで阿部、坂本を欠く巨人に2勝6敗。前日のポレダ、高木勇と対戦した6戦は全敗だ。猛虎にとっては厄介な存在になってしまったが、指揮官は打線だけの問題ではないとした。

 「爆発力がない中で、記録に出ない守りのミスがね。そういうところだよね。点取れない時はしっかり守らないと。勝ってる時はこれができているんだけど、逆の意味で大味になってしまって、そういうところをチェックしていかないと。甲子園は特に空中戦にはなりづらいから」

 2点リードした3回には一塁ゴメスが橋本の打球を捕れず(記録はヒット)、直後に能見が片岡に同点2ランを浴びた。6回には村田の二遊間への当たりを上本が追いついたかに見えたが、抜けた。2点を勝ち越されてからは捕逸に野選…。指揮官は守備の厳しさで巨人と差があったことを認めた。

 激しいチーム内競争が生む層の厚さ、1点勝負をものにしていくしたたかさ。優勝を目指す猛虎が、リーグ3連覇中の王者に厳しい現実を突きつけられている。【鈴木忠平】