2年連続最下位のヤクルトが、今季はひと味違う強さを見せている。食事に秘密があると考え、戸田寮の食堂を取材した。デスクから乳酸菌飲料を扱う会社なだけに、食事に秘密があるのでは、とアドバイスを受けたことが始まりだった。

 すし、つけ麺、ステーキ、海鮮丼…。豪華絢爛(けんらん)、多種多様なメニューが、選手の胃袋をつかんでいることを知った。取材した5月2日は、桜エビのかき揚げが、香ばしい香りを漂わせていた。魚類は、築地から新鮮なものを直送。高級魚である、のどぐろも提供される。さながら、料亭のようだった。

 驚かされたのも、無理もなかった。初めて出会うタイプの人だった。食堂の責任者の三沢岳明氏(40)は、元板前の肩書を持つ。約6年間、都内のプリンスホテルの日本料理店で腕を振るった。三沢氏は「全然すごくないですよ。今はこうして、寮の食堂にいる訳ですし」と謙遜したが、料理人独特のオーラを感じずにはいられなかった。

 さらに驚いたのは、同氏の掲げる信念だった。「食事に対してのストレスは感じてほしくない。その気持ちは、一番大事にしています」。決まった時間に料理を出すことが、仕事ではない。食事に対するストレスフリーへのこだわりが、ぜいたくすぎるメニューの数々を生んでいるのだと考えさせられた。【栗田尚樹】