マウンドで仁王立ちした阪神藤浪に、4番が虎の子の1点をプレゼントした。主砲マウロ・ゴメス内野手(30)が、6回1死一、二塁でしぶとく左前タイムリー。チームは打線爆発とはいかなかったが、このしぶとさで今日21日のドラ1横山援護も頼むで~!

 見逃せばボール球だった。外角に沈んでいく大竹のチェンジアップ。だがゴメスは体勢を崩されながらも左手1本でとらえ、三遊間を破った。0-0で進んだ6回1死一、二塁。執念の一撃に甲子園が沸き、ベンチ前でキャッチボールしていた藤浪もグラブをたたいた。「うまく拾うことができた。藤浪がいい投球をしていたので、勝ててよかったよ」。お立ち台を背番号19に譲った助っ人は、ニヒルな笑みで勝利を喜んだ。

 初回のリベンジに燃えていた。同じ1死一、二塁の先制機で、外角低めのスライダーを振らされ三振。「チャンスで打てなかった」と唇をかんだ。だが同じ轍(てつ)は踏まなかった。次も苦手なボール気味の外角変化球で勝負してくるはず。冷静に配球を読み切り、4回には初回にやられた同じ外角スライダーを右前打。そして6回、相手が球種をチェンジアップに変えても、教訓を生かしたゴメスの勝ちだった。

 実は虎のミスター1-0だ。来日2年間で虎の1-0勝利はこの日が6度目。そのうち半分の3度がゴメスの勝利打点だ。「僕は毎試合勝利に貢献したいと思っている。今日はそれができたということだよ」。さらりと言うが、それだけ勝負どころで4番らしい働きをしている証しといえる。チームにとってもこの日の一打が5試合ぶりの先制点で、ゴメス自身の1発を除けば34イニングぶりのタイムリー。文字通り、4番と藤浪で勝った試合だった。

 今月に入ってドミニカ共和国から野球経験のある弟が来日した。東京や名古屋遠征に同行して食事に出かけるなど、リラックスムードを漂わせる。だが戦闘服をまとえばスイッチオン。前日無安打で完敗した悔しさもあってか、この日は20分以上早く球場に出て、打撃準備をする姿があった。

 首位DeNAとは7差ある。だがゴメスは事もなげに言った。「まだあと101試合もあるんだよ。今はゲーム差を考えず、自分たちのできることをしっかりやることが大事だ」。そう、まだ100試合以上ある。虎の反攻はここからだ。巨人連倒へ、今日21日は初先発のドラフト1位横山を大量援護だ。【松井清員】