巨人が、ダイヤモンドより硬いはずの石橋を渡れなかった。1点リードの8回、先発マイコラスが先頭の阪神福留に内野安打を許す。2本目の被安打だった。相手が代打、代走と動く中、原辰徳監督(56)は山口鉄也投手(31)の交代を告げるべく、ベンチを出て待っていた。「1点を全力で守ろうと考えた」。先発陣が軒並み好調で、ブルペンはフレッシュな状態。先頭出塁での継投は妥当な選択だった。

 送りバントで1死二塁、代打関本。定石通りだった。「いつも通り準備はしていた」山口の球道が定まらない。ワンバウンド2球を含む四球で「申し訳ないです」。機を見て敏に、防御率1点台のスコット・マシソン投手(31)を送り込んだ。2人で何百試合もしのいできた。しかし誤算は続いた。代打狩野への5球目、直球が抜け、肩に当たる死球。塁が埋まった。

 マシソンは突発的に制球が乱れる時がある。コースに置きにいって腕の振りが緩むと、球速はあっても打ち返される。同点の犠飛も、決勝の適時打も、そんな直球。「(決勝打の鳥谷は)直球を狙ってきたと思う」。1点を守りきれなかった。

 投手13人制を敷くからこそ、積極的かつ繊細な継投ができる。最も堅い策を打ったのに、山口とマシソン両人が転んだ。8回に逆転されるという、最も想定しがたい事態が起こったということだ。【宮下敬至】