井手の打球は右翼線へと伸びていく。右翼福留も追うのをあきらめる…。阪神は同点の9回2死二塁。福原がサヨナラ打を浴びて痛恨の敗戦となった。3回までに5点を先制する完勝モードも試合中盤以降、みるみる怪しくなる。和田豊監督(52)の非情なタクトも実らなかった。

 戦況が一変したのは5回だった。先発サンティアゴが2死を奪ったあと、雲行きが怪しくなる。関根に四球を与え、下園には左前適時打で1点を奪われ、筒香には3ランを被弾。瞬く間に1点差に迫られた…。指揮官も「関根への四球が痛かったな。(筒香に)ツーシームでいったと思うけど、ベンチで見ていて、あまり動かなかった。沈まなかった」と振り返った。

 勝つために鬼になる。アーチを浴びた直後、ベンチから迷わず飛び出した。ロペス相手に投手交代-。あと1死で勝利投手の権利を得る局面だったが、見切った。「いっぱい、いっぱいのところ。4回からちょっと球が…」。攻めの采配を振って、悪循環を断ったかに映ったが、DeNAに傾いた流れを再び、取り戻すことはできなかった。

 終盤は防戦一方だった。7回、同点に追いつかれて窮地に追い詰められる。9回1死二塁になると指揮官はさらに動く。マートンに代えて大和を中堅の守備固めに起用。俊介を左翼に移す鉄壁の布陣を敷いたが報われない。最善を尽くしたが、徒労に終わった。連勝は2で止まり、借金を背負って交流戦に臨むことが決定。首位DeNAに力負けし、まだ一進一退の状態は続く。【酒井俊作】

 ▼阪神が3回までに挙げた5点を守りきれず、追いつかれ、サヨナラ負けした。5点差以上をひっくり返された敗戦は13年8月20日DeNA戦(横浜)以来2年ぶり。前回は阪神が3回表に7点を挙げたが、その裏に3点を返され、4回裏に5点を失い逆転。阪神は6回に同点に追いついたものの、9回裏に安藤が代打中村にサヨナラ左安打を浴びた。ちなみに、阪神が3回までに5点を挙げたのは今季初めてだった。