巨人が「楽天の野球」に屈した。1点リードの4回、先発ポレダが重盗を含む4盗塁を許し、3安打で4失点。打線は辛島を崩せず、変化球主体に切り替えられた6回から8回までの無安打が響き、逃げ切られた。原辰徳監督(56)は「相手が少し上回った。丁寧に投げられた分、我慢しきれなかった」と話した。

 節目のゲームだった。5月29日は父貢氏が78歳で亡くなって1年だった。「仙台に向かう前、お墓に行ってきました」。2週間前に身内だけの一周忌を済ませた。浮かぶのは厳格さではなく、ぬくもりだった。

 開幕2日前、3月25日の東京ドーム。原監督は必勝のだるまに目入れをした。筆に墨を含ませ、美しいまん丸をしたため、だるま職人から「上手だなぁ」と驚かれた。「昔から慣れてるんだ」と笑った。「原家にとって正月の恒例行事。おやじが毎年、新しいだるまを買ってきた。目入れは、なぜか幼いころからオレの仕事。『辰徳がやりなさい』って」。丸くて優しい記憶ばかりが残っていた。

 「ひょうたんのような人間になれ」。指導者の道に進む人間に、貢氏が贈っていた言葉だ。「ひょうたんは、真ん中がグッと縛られている。遊ぶときは遊べ。楽しむときは楽しめ。やらないといけない時は集中してやれ」と添えていた。親子鷹の多感なころ、厳しさを理不尽に感じていた。今は分かる。ひょうたんの丸みを強調するために、グラウンドでうんと厳しく接したのではないか。一本気では人はついてこない。丸の大きさとのギャップが懐となり、束ねる源になる。

 自宅で2度、手を合わせ球場に向かう。「まず神棚に『今日も無事で、勝てますように』。次はおやじさんの遺影に。『ありがとうございます』って」。この1年のルーティンになった。「交流戦だからどうこうより、信念が大切」と臨んだ節目。12年かけて育んだ大きなひょうたんを磨き上げていく。【宮下敬至】