打撃低迷に悩む阪神が掛布雅之GM付育成&打撃コーディネーター(DC=60)を、現在の2軍だけでなく1軍の指導にもあたらせるプランを持っていることが15日、分かった。打率、本塁打、得点で12球団最低に沈む打撃陣のテコ入れ策として、レジェンドが、その指導力を発揮する可能性もありそうだ。

 手をこまねいてはいられない。極度の不振に苦しむ猛虎打線へのテコ入れ策として、球団が掛布DCに1軍指導に加わってもらうプランを持っていることが分かった。

 今季は球団創設80周年の記念シーズンだが、チームは借金3で3位と、いまひとつ乗り切れていない。現在4連敗中で直近ではパ・リーグ最下位のオリックスに3連敗するなど、惨敗ぶりが際立っている。その大きな要因が打撃不振だ。チーム打率(2割2分8厘)、本塁打(29)、得点(183)と攻撃の主要項目は軒並み12球団ワーストと深刻な状態だ。阪神は20日からはリーグ戦に再び突入するだけに、何とか立て直したい。その具体策を球団首脳はこう語った。

 「外部からだれか呼んでくるとかいうより、うちには掛布DCがいるわけだから。今も巡回のような役割をしているし、今後、1軍も教えられるような形にできれば、ということは考えています」

 掛布DCは、13年10月に生え抜き大砲を育てるための切り札として、現役引退以来25年ぶりに阪神に復帰した。肩書が示す通り、2軍での若手育成指導が中心で、1軍を指導するのはキャンプ中に視察した時だけだった。だが、今後球団はキャンプ時のような巡回的な役割で1軍指導にあたってもらうことを検討しているという。肩書変更などは不明だが、1軍貧打解消の切り札としての期待がある。

 掛布DCの就任以降、2軍から1軍に昇格した選手が「掛布さんに○○を教えてもらいました」と話すことが多くなった。実績やカリスマ性もさることながら、ほめて個性を伸ばす指導法、豊富な語彙(ごい)力を生かし、イメージしやすい助言には心酔する選手も多いという。例えば、今年3年目の北條に膝をやわらかく使えと指導した際には「ヒゲダンス」というキーワードを用いた。

 掛布DC1軍プランを実現させるには、1軍打撃コーチとの役割分担などが課題となるが、球団内では首位と2・5ゲーム差にいる今のうちに“特効薬”を打っておきたいという思いもある。4番として85年の日本一を実現したミスター・タイガースが、1軍のグラウンドで手腕を発揮することになるかもしれない。

 ◆掛布雅之(かけふ・まさゆき)1955年(昭30)5月9日、千葉県生まれ。習志野から73年ドラフト6位で阪神入団。79年に初の本塁打王。85年には40本塁打、108打点。88年に33歳で引退。現役時代は175センチ、77キロ。通算1625試合、1656安打、349本塁打、打率2割9分2厘。本塁打王3度(79、82、84年)、打点王1度(82年)、ベストナイン7度、ゴールデングラブ賞が6度。右投げ左打ち。13年オフからGM付育成&打撃コーディネーター。

<掛布DCの指導あれこれ> 

 ◆掛布棒 14年2月の安芸キャンプで、掛布DCはバットより短いポール状の棒を用意。スイングの軸を意識させるための練習。

 ◆ヒゲダンス打法 14年2月の安芸キャンプで北條に指導。膝を柔らかく使うことを意識させるため、ドリフターズで一世風靡した「ヒゲダンス」をイメージさせた。

 ◆本塁打量産の秘けつ伝授 14年2月の宜野座キャンプで鳥谷を指導。今春もバットのヘッドを返し、遠心力を利用する打法をアドバイスした。

 ◆三塁コーチに打て 15年4月、結果が出ず2軍落ちした江越に「サードコーチャーに向かって強いファウルを打て」と助言。結果を求めるがあまり、当てにいく打撃に終始していたルーキーに持ち味を思い起こさせた。再昇格の4月28日ヤクルト戦(甲子園)でプロ1号。