常人には分からない「第六感」で打った。ヤクルト山田哲人内野手(22)が、中日戦の初回に13号先頭打者アーチ。先頭弾は通算10本目で、78年球団初優勝時の助っ人ヒルトンに並び、球団2位タイに浮上した。2戦連発弾でハーラートップ中日先発大野の出ばなをくじき、チームは4月19日DeNA戦以来となる同一カード3連勝。首位阪神とのゲーム差を2に縮めた。

 山田には何かが見えていた。プレーボール直後の先頭打者で、カウント1-2と追い込まれた。変化球は直前の外角シュートのみで、内角球もなし。2球外される可能性もあったが、「インコースはノーマークにならない程度。直球にだけ振り負けないように」と「シックスセンス(第六感)」が働いた。だから迷いなく、5球目の外角高め140キロ直球に反応できた。試合開始1分足らずで、左翼席まできれいなアーチを描いた。

 予知能力を備えていた。1点を追う6回無死一塁の第3打席でも中前打。「簡単に直球は来ない」と外寄りのシュートを芯で捉えた。後続につなぎ、逆転劇を呼び込んだ。前夜も8回に「何かスライダーが来そうな気がした」と、待ち構えた変化球を12号ソロ。山田には感性に裏付けられた鉄則があり、「迷ったら、僕は振らない」。本人しか分からない直感が、2戦連発につながった。

 山田の秘めた能力を三木内野守備走塁兼作戦コーチが証言する。

 三木コーチ 人にはない第六感、シックスセンスがあるんだと思う。どんな気持ちで打席に入るんだと聞いたら「僕はありのままです。僕は生まれたてのまま」って言うんだ。あれだけ打ってる打者だったら迷うはず。俺らには見えないものが見えているのかも。

 山田は「シックスセンスあるんですかね。幽霊なんかは見えないですよ」と無邪気に笑う。ただ、高校時代から天性の“読み”には定評がある。スポーツ強豪校として知られる履正社(大阪)では体育の授業で、竹刀の動きを読み、剣道部のエース格から一本を取って勝利した逸話も。読みの鋭さ、勝負勘は筋金入りだ。

 リードオフマンの一撃は効果的だった。今季まだ3被弾の大野から2本目。秋田で行われた5月10日も先頭弾を放った。好相性に「得意とか思っていない」と謙遜したが、感性を研ぎ澄まし、同一カード3連勝の主役になった。【栗田尚樹】

 ◆デーブ・ヒルトン 1950年9月15日、米国生まれ。ライス大-パドレスを経て78年ヤクルト入団。78年は打率3割1分7厘、19本塁打、76打点。阪急との日本シリーズ第4戦で9回2死から逆転2ランを放つなど日本一に貢献し、二塁手でベストナイン。80年に阪神へ移籍し、3年間通算251試合、打率2割8分4厘、38本塁打、128打点。78年の6試合連続二塁打はセ最多タイ。現役時代は185センチ、86キロ。右投げ右打ち。帰国後は3Aでプレー後、1A監督やツインズのスカウト、台湾勇士の監督などを歴任した。

 ▼山田が今季4本目、通算10本目となる先頭打者本塁打。昨年は6本を放っており、2年連続でシーズン4発以上はヤクルトでは初めて。通算10本はヒルトンと並ぶ球団2位タイとなった。22歳11カ月での10号到達は、坂本(巨人)の22歳4カ月に次ぐ史上2位の年少記録。