DeNAが劇的サヨナラ勝ちで史上初の大混戦に導いた。阪神戦は2点を追う9回に代打後藤武敏内野手(35)の同点2ランで追いつくと、最後は石川雄洋内野手(28)のサヨナラ打で決着。今季19試合目の逆転勝利を飾り、本拠地横浜スタジアムでの連敗も6で止めた。日本プロ野球80年の歴史で初めて全6球団が借金を背負うとともに、0・5ゲーム差に迫った5位広島まで、今日4日は5球団に首位のチャンスが出てきた。

 雨が打ちつける横浜に、もっと激しい水しぶきが上がった。2点を追う9回。土壇場に追い込まれた「キヨシ軍団」の目の色が変わった。まずは、無死一塁から代打後藤のバットがうなった。阪神の守護神・呉昇桓の139キロカットボールを強振。右中間席に起死回生の同点2ランを放り込むと、なおも攻めた。高城が中前打で出塁すると、飛雄馬が犠打を決めて、1死二塁と舞台を整えた。最後は石川が右中間を破るサヨナラ二塁打を放ち、劇的勝利を決めた。

 敗色ムードを最後の最後で、ひっくり返した一戦に、中畑清監督(61)の興奮は最高潮に達した。試合直後のテレビインタビューでは質問を振られる前に「いやー、来たね! やっと、勢いがよみがえったゲームが出来た。すごい! ナイスゲーム!!」と一気にまくし立てた。序盤戦は「逆転のDeNA」の異名で快進撃を演じた。交流戦の大失速で失いかけた「勢い」復活を予感させる、大きな1勝を手放しで喜んだ。

 ナインにもみくちゃにされながらウオーターシャワーを浴びた石川にとって、自身プロ初のサヨナラ打だった。11年目にしての初体験に「打った瞬間に抜けたと思いました。イメージ通りの打撃ができた。すごく楽しかった」と声を弾ませた。11打席、9戦ぶりの安打が劇的弾になった後藤も「本当に打てていなかったので、打席に向かうのも苦しかった。ゴロだけは避けようと心掛けてスイングした。よく強振できたと思います」と、代打の切り札としての復活弾だった。

 中畑監督が掲げる「最後まで諦めない野球」で、大混戦のセ・リーグを演出した。阪神を引きずり込み、全6球団が借金を背負った。「苦労は買ってでもしろって言うでしょ。裕福なんてするもんじゃない。借金ぐらいは持っていないと。うちは(昨季まで)ずっと借金生活だったから慣れるよ」と“キヨシ節”も絶好調。DeNAも借金2の4位ながら、首位ヤクルトまで0・5ゲーム差で“首位争い”に踏みとどまった。面白すぎる主役への返り咲きを、虎視眈々(たんたん)と狙っている。【為田聡史】

 ▼ヤクルト●、阪神●の結果、セ・リーグは6球団すべて借金に。同一リーグの全球団が借金は史上初で、ヤクルトは初の借金首位チームとなった。過去、優勝チームで最も貯金が少なかったのは75年阪急の5(64勝59敗7分け)だが、この時は前後期制で、前期優勝、後期6位の阪急がプレーオフでV。1シーズン制では73年巨人の6(66勝60敗4分け)が最少。今季のセ・リーグは貯金いくつで優勝が決まるか。