こりゃ痛快、あっポレダ! 阪神新井良太内野手(31)が、首位タイ浮上に導く殊勲打を放った。過去4戦全敗の巨人ポレダに対し、初回2死満塁。初球を捉えセンターへグイっと伸びる一掃の先制二塁打だ。今季7度の満塁機で5安打9打点! 天敵を攻略、巨人を首位から引きずり降ろした。勝率も5割復帰。雨の甲子園に笑顔の傘が咲いた。

 敵を欺く、もうひと伸びが天敵ポレダの牙城を崩した。1回2死満塁、その初球。新井が低め146キロ直球をつぶした。センターへの弾丸ライナーに浜風がぶつかり、浮力が増す。中堅立岡は一瞬前進しかけた後、慌ててバックしたが時すでに遅しだ。「伸びてくれて良かった」。白球が懸命のジャンプをかわす。走者一掃の先制二塁打で甲子園の雰囲気を一変させた。

 試合前の時点でポレダ相手に今季4戦4敗、防御率1・75と抑え込まれていた。「自分は打席に集中しただけです」。負のデータを“無視”する心の強さがあった。今季は満塁機で6打数5安打9打点、6打席連続打点。「たまたまです」と照れ笑いした。

 「入れ替えの度、次はオレだろうなと思っていたよ。こんな成績で下にいる選手に申し訳ないという気持ちがあった。自分が2軍にいたら、なんでアイツは落ちないんだって不思議に思うだろうな、と考えたり…。そんな時だった」

 開幕直後から不振続き。1割を切る打率も経験しながら他の選手が2軍降格していく。情けなさ、申し訳なさ…。さまざまな感情に苦悩していた5月上旬、ロッカールームで関本に声をかけられた。「オマエ、谷繁さんの言葉、知ってるか?」。中日谷繁兼任監督が4月30日巨人戦で通算3000試合出場を達成した際のコメントだった。

 「無駄な試合や、何でもない試合なんていうのは1つもないと、全プロ野球選手に伝えたい。その選手を出しているということは、ベンチがその選手を必要としているということ」

 中日時代、世話になった大先輩の言葉。伝え聞いて吹っ切れた。必要とされているなら、立ち位置を考える必要はない。声を出す。仲間を励ます。準備に全力を尽くす。出番で120%を出し切る。今まで以上にスタイルは明確になった。

 前日21日巨人戦はスタメンで3打数無安打。2戦連続の先発起用だった。「毎日頑張ろうという気持ちでいるけど、今日も使ってもらって、よりそういう気持ちでした」。3点リードの3回2死一、二塁では2番井端の三遊間ゴロにダイブし、アウトをもぎ取った。元気印が攻守でハッスルプレーを披露し、勝率5割復帰で首位タイに浮上。猛虎の夏、気温が急上昇してきた。【佐井陽介】

 ▼新井は今季、満塁の打席で6打席連続打点をマーク。6打数5安打で打率8割3分3厘と、圧倒的な勝負強さを誇る。今季の満塁での9打点は(1)山田(ヤクルト)12(2)田中(広島)10に続き、セ・リーグ3位につけている。