この男の勢いは誰にも止められない。ヤクルト山田哲人内野手(23)が、3戦連発となる23号3ランを放った。チームもシーソーゲームを制し、中日3連戦をスイープ。11年9月13日以来の7連勝を飾り、貯金も5月3日以来の「3」に戻した。セ・リーグの本塁打キングを独走する山田のバットで、混セを抜け出す。

 末恐ろしい23歳が、セ界の中心にいる。初回無死一、三塁。ヤクルト山田は初球に反応した。真ん中高めに抜けたチェンジアップを見逃さなかった。「何も待っていなかった。ただ、三塁にランナーがいたし、外野フライでもよかった。そしたら初球に甘い変化球がきたので、迷わずに思い切ってスイングできました」。2夜連続の初回アーチを、バックスクリーン左に描いた。

 ずばぬけた反応速度が、迷いのないフルスイングを可能にする。山田は「あんまり反応が速いとか感じたことはないです。動体視力とか測れるんですか? 僕は全然知らないです」と意に介さないが、周囲は秘められた能力に感心する。橘内(きつない)トレーニングコーチは「神経筋反応といいますが、目の前に与えられたものに対する反応が速いと感じます。それがスイングの速さや球種の判断に生かされていると思います」と証言する。

 アップ時から違った。笛の合図で短距離ダッシュをする際も、山田は人とは違う反応を示す。両隣に並ぶ大引、川端よりも頭1つ速く抜け出る。同コーチは続けた。「0・00秒の世界ですが、やはり速い。脳に伝達するスピードが速い分、打席の中に余裕が生まれているのかもしれません」。高い身体能力が、アーチ量産を呼び込んでいる。

 彩り鮮やかな1発は夏の夜に似合う。24日から始まった5回終了時の花火イベントでは、3日間で計900発が打ち上げられた。山田も波長を合わせるように、3戦連発で神宮の夜空を彩った。真中監督も「たまには山田以外の記事も書いてあげてよ」と報道陣に冗談を言うほど、ご満悦だった。打撃7部門で3傑入りするなど、3冠王も狙える位置にいる。山田は「今は打てているので調子はいいかもしれません。でも今年は今年なので頑張ります」。力強い宣言通り、連勝街道への案内人になる。【栗田尚樹】