若き主砲が起死回生の一撃を放った。DeNA筒香嘉智外野手(23)が1点を追う9回、巨人のエース菅野から17号逆転2ランを右翼席にぶち込んだ。2戦連発となる1発でチームの連敗を4で止めた。首位で前半戦を折り返した順位は5位まで下がり、沈みがちだった「キヨシ軍団」が、頼れる主将の劇的弾で再浮上へのきっかけをつかんだ。

 まさに一振りだった。「いけー!」。筒香の叫びとともに打球は右翼席に飛び込んだ。9回、1点を返し、なお1死二塁。完投ペースだった菅野を沈める起死回生の逆転2ラン。久々に表情が崩れるほどの会心の一撃に「梶谷さんがつないでくれた。何としてでもかえしたいと、それだけでした」と興奮気味に振り返った。

 内角に沈むカーブを全身で捉えた。下半身をぐっと落とし、体を回転させて白球を押し込んだ。前日12日に18戦ぶりのアーチを放ち「少し感覚を取り戻せたかもしれない」とかすかな手応えをつかんでいた。試合前の打撃練習を終えると「体の上体が高くなっている。良かったときは、もっと低かったと思う。インパクトで伸び上がってしまっているんですよね」と自身の状態を冷静に分析できた。

 グラウンドでの感覚は寝室での予習の成果だった。打球に思うような角度が付かない日々にスランプを感じずにはいられなかった。「このままシーズンが終わってしまう」。焦りを抑えながら、スマートフォンの画面を見入った。「良かったときの打撃を何回も見ました。自分のもそうだし、ほかの打者のもとにかく見まくりました」。枕元で小さな明かりが光っていた。

 理想とする打撃を取り戻し、4番の仕事を全うした。「8回まで全然打てていなかった。やられっぱなしというわけにはいかなかった」と敗色ムードを一転させた。中畑監督も「久しぶりに鳥肌が立った。よくぞ、ワンチャンスを生かしてくれた。メンタルの強さを出してくれた」と、若き主砲の一打を褒めちぎった。

 爽快な逆転劇で連敗を4で止め、同一カード3連敗を阻止。筒香は「いつも監督から『最後まで諦めずにやれば、何が起こるか分からない』と言われている。まだまだチャンスはある」とチームの士気を高めた。「キヨシ軍団」の旋風はまだ、終わらない。【為田聡史】

 ▼筒香が9回に逆転2ラン。今季の筒香は勝敗を左右する貴重な一打が多く、勝ち越しもしくは逆転となる本塁打は7月14日巨人戦に次いで今季4本目。エルドレッド(広島)と並んでセ・リーグ最多タイに浮上。勝ち越しか逆転の安打は今季7本目。6本で並んでいた梶谷(DeNA)ゴメス(阪神)を抜いて、リーグ単独トップに立った。