執念がバットに乗り移った。3回1死満塁。DeNA筒香嘉智外野手(23)は、やるべきことを1つに絞った。「前に飛ばせば何かが起こる」。相手は今季5打数ノーヒットと苦手の広島福井。7球目の高めフォークをたたきつぶした。弾丸ライナーの19号が右翼席へ突き刺さった。「自分を信じていきました。1打席目にチャンスで三振したので、絶対に打ちたかった」。チームに勇気を与える4点で、連敗を6で止めた。

 9試合、35打席ぶりの打点だった。「自分は勝利打点をずっと目標にしているので、よかったです」。主軸の責任を果たし、少しだけ胸をなで下ろした。連敗中は好機で打順が巡らない不運もあったが、焦りを排除して平常心で臨むように努めた。「打点は巡り合わせもあるし、自分だってチャンスメークできていない時があった。そこで今までやってきたことを変えたらダメだと思った」。走者をかえすことだけに集中した結果の満塁弾だった。

 必ず勝機が来ると信じていた。「ベンチも選手も、誰1人として諦めていなかった」。3回の満塁機は力投を続ける三嶋の中前打に始まり、今季初の1番に入った下園が遊撃内野安打で続いた。柳田が犠打で送れば梶谷も四球を選び、つなげてくれたチャンスだった。「全員が1つになっていた」と手応えがあった。

 この日の入場者は2万6713人。優勝した98年を抜き球団最多の今季33回目の満員大入りを記録した。「ファンの皆さんも諦めていなかった。ありがたいです。ここから勝ち続けます」と感謝した。最後まで、そのバットで上位に食らい付いていく。【松本岳志】