苦労人がチームをクライマックスシリーズ(CS)圏内の3位に引き上げた。ロッテのチェン・グァンユウ投手(24)が日本ハム相手に自己最長となる6回1/3を投げ、2安打1失点で3勝目を挙げた。2回にレアードのソロで先制を許したが、打者に向かっていく気迫の投球で味方の逆転を呼び込んだ。チームは2連勝で、西武に代わり3位浮上。今日4日からの直接対決に最高の雰囲気で臨む。

 みんなからねぎらわれた。7回1死。ロッテ・チェンは日本ハム田中に四球を与え、交代を命じられた。悔しそうだったが、内野手から次々とグータッチを求められた。三塁側ベンチ上のファンは、立ち上がって拍手。そして、ベンチに戻ると歩み寄ってきた伊東監督に声をかけられた。「うれしかった。ちょっと貢献できました」と笑った。

 「テンポよく。低めに」とアウトを重ねた。初回先頭は「台湾のスーパースター。ずっと対戦したかった」という故郷の先輩・陽岱鋼を2球で遊ゴロ。3回2死では内角141キロで見逃し三振。全く反応させず、「今日一のボール。びっくり。気持ちいい」と目を丸くした。日本ハムとの初対戦が決まり、台湾の友人から「陽さんを抑えて」と激励がたくさん届いた。テレビで見ていたあこがれの人を牛耳り、波に乗った。

 CS進出のためにも、ふがいない投球はできなかった。朝、目が覚めると緊張に襲われたが、マウンドでは忘れた。打者に向かう姿勢が良かった。「攻めの投球です」と中田の懐も突いた。遊撃から励まし続けた鈴木は「気持ちが入っていた。勝たせたかった」。チェン自身の気迫が、中盤の逆転の呼び水になった。

 外国人枠もあり、去年まで在籍したDeNAでは1試合のみ。3年前には左肘のトミー・ジョン手術も受けた。ロッテでも、この日が約40日ぶりの1軍。通訳はいない。日本語でコミュニケーションを続け、2軍でも笑顔を絶やさない。5キロほど増した最速144キロは努力の結晶だ。「CSでも投げたい。もっともっと貢献したい」。貴重な左腕が加わった。【古川真弥】