絶対に負けられない一戦で躍動した。ロッテ石川歩投手(27)が西武打線を6回4安打2失点に抑え、12勝目。初回から自己最速タイ151キロを出す気迫の投球だった。3位西武と1・5ゲーム差で迎えた最後の直接対決。残り試合を考えれば、逆転CSには落とせなかった。0・5ゲーム差に迫り、望みをつないだ。

 石川は初回からスイッチを振り切った。プレーボール直前の「嫌な感じ。プロ初登板みたい」という緊張感を、自分でねじ伏せた。西武の先頭秋山を148キロで左飛。渡辺の初球に自己最速タイ151キロ。栗山にも151キロ、150キロと続け、最後は137キロのシンカーで空振り三振。ストライクからボールへ激しく落とし、空を切らせた。

 一戦の意味を分かっていた。負けたら、CSが一気に遠のく。「周りの雰囲気が違った。チームが1つの感じ。最初から飛ばしていこう」と使命感に燃えた。したたかに準備を進めてきた。中5日と短かったが、いつもより負荷をかけ調整。前回22日の楽天戦は7回無失点で勝ったが、中盤から球がシュート回転していた。「調整ミス。それを生かしました」。反省を踏まえ、ベストに持ってきた。

 2年目を迎え、目標の存在ができた。涌井だ。開幕直後「涌井さんより勝ちが多かったら、何かおごってもらいます」と言った。7月末でともに8勝。良い勝負に見えた。だが、8月。石川は勝てなかった。その間、涌井は白星を重ねた。9月。涌井は13日の西武戦に変則の中8日で勝利した。「素晴らしいですね。その日に合わせられるのがすごい。僕はまだまだです」。そう言っていた石川が、同じ西武を倒した。エースに負けない仕事をした。

 勝てなかった夏場も努力を重ねてきた。焼き肉を食べ、間食を増やし、サプリを飲み、夏前に落ちた3キロの体重を取り戻した。遠征先でサウナを覚え、疲れをためないようにした。やってきたことが、正念場で実った。登板後「2回から、ばてました。抑えた記憶がないぐらい。緊張して、ほとんど覚えていない」と照れながら打ち明けた。勝った。それが全てだった。【古川真弥】