プロ野球担当記者をしていて、何と言ってもしびれるのは短期決戦だ。セ・リーグでは第1ステージから予告先発もなし。先発投手を探るのにも神経を使う。選手、首脳陣も、どこかピリピリしていて、ペナントレースとは違う、緊張感に包まれる。

 試合もドラマチックだ。その数々を今回の5回連載で披露していきたい。

 10年のロッテも熱かった。あの「下克上」で3位から日本一になった年だ。西武との第1S第2戦。1点を追う9回に里崎が起死回生の同点本塁打を放った。延長11回に井口の適時打で勝ち、2連勝でファイナルに進出した、あの試合だ。

 我々報道陣は、9回になると記者席からベンチ裏に移動する。CSでは報道陣が普段に比べて非常に多い。西武プリンスドームのベンチ裏で待っている間、廊下にいなければならず、我々報道陣は、グラウンドの様子が分からない人もでてくる。私もその1人で、歓声をたよりに試合終了を待っていた。

 そんな9回の大歓声に「西武が勝ったかな」と思ったら大間違い。勝負強い里崎が本領を発揮しているではないか! ベンチ裏の通路に「里崎だ!」と伝言が伝わる。想定していた原稿は吹っ飛んだ。締め切り時間を逆算しつつ、ロッテの勝利の原稿に、思考を巡らせた。

 選手の一挙手一投足にドラマが詰まる。何年たっても語り継がれる、そんなCSが、今年も見たい。【金子航】