阪神がドラフト3位でサプライズ指名したのは、熊本ゴールデンラークスの竹安大知投手(21=伊東商)だった。昨冬に右肘のトミー・ジョン手術を受け、今季公式戦1イニングしか投げていない。全国的には無名ながら、本人もビックリの3位指名となった。目標は先発ローテ入り。金本監督のような強靱(きょうじん)な体をつくり、息の長い選手を目指す。

 仲間とともに寮でドラフト中継を見ていた竹安は、阪神3位で名前が呼ばれると、思わず驚きの声をあげた。

 「指名されても4位以下と思っていた。まさか3位とは…。下を向いていたら、チームメートがオーッと声をあげ、ビックリした」

 阪神、巨人、中日、オリックスの4球団が調査書を送り極秘マークする中での3位指名だった。キレのある最速145キロの直球が武器。決め球は三振の取れるフォークで肘の柔らかさを生かしたしなりのあるフォームが評価された。

 高校時代には甲子園出場を目指し、静岡から東京の二松学舎大付に野球留学した。1年秋に地元の伊東商に転校。1年間の出場停止が明け、エースの座をつかんだが県8強が最高で、プロ志望届も出さなかった。

 社会人の熊本ゴールデンラークスでは1年目の13年からエース級の活躍。昨夏にはホンダ熊本の強化選手として都市対抗にも出場した。だが右肘の内側側副靱帯(じんたい)を痛め、昨年12月にトミー・ジョン手術を受けた。今季は9月の日本選手権九州予選で1イニングに登板しただけ。田中敏弘監督(45)も「やっと投げられるようになって、来年復活させるシナリオだった」と、指名に目を丸くした。

 2年前から視察を続けていた九州地区担当の田中秀太スカウトのイチオシだった。9月に復活のマウンドを視察。獲得を強く薦めた。金本監督は「ホンマよ。(田中スカウトが)あれだけ推すから」と、理由を明かした。

 チームの母体は熊本県内でスーパーを営む「鮮ど市場」。商業高校出身の竹安は昨年までは会社の本部で経理を担当。今年から業務提携を結ぶジムで午前中はトレーナーを務め午後から練習に励んでいる。目標は金本監督のような長寿選手。「プロで長くやるための体をつくりファンの方に愛される選手になりたい」。アマチュア時代から紆余(うよ)曲折の野球人生を歩んできた。雑草魂を胸にプロでの第1歩を踏み出す。【福岡吉央】

 ◆竹安大知(たけやす・だいち)1994年(平6)9月27日、埼玉県生まれ、静岡県育ち。小1から富戸ジュニアで野球を始める。中学は伊東リトルシニア。二松学舎大付を1年夏に中退し、伊東商に転校。13年から熊本ゴールデンラークス。変化球はスライダー、カーブ、フォーク。遠投115メートル。趣味は寝ることで1日20時間寝たこともある。183センチ、80キロ。右投げ右打ち。家族は両親と妹、弟。O型。

 ◆熊本ゴールデンラークス 母体は熊本県を中心に九州で25店舗を展開する総合スーパー「鮮ど市場」(田中弘文社長)。野球部は05年2月に創部で、グラウンドと寮は熊本県合志市。選手はほかの従業員とともに店舗などで働く。球団名は「県民に応援してもらいたい」とあえて企業名は入れず、熊本県鳥のひばりにちなんだ。都市対抗出場2回。日本選手権出場1回。主なOBに香月良仁(ロッテ)、川崎成晃(ヤクルト)、島井寛仁(楽天)ら。