阪神金本知憲監督(47)が1日、秋季キャンプ初日から喜怒哀楽を全開にした。初日としては昨年の40倍となる約2000人のファンが詰めかけた高知安芸市営球場。ピリッとした空気が走ったのは投手、捕手も入った走塁練習中だった。3年目の育成右腕・田面(たなぼ)巧二郎投手(24)がコーチの指示を受けたが、返事がなかった。その直後、金本監督の怒声が響いた。「返事!」。

 実は初日の冒頭、全員の前で指揮官が説いたのがあいさつ、返事を大きな声でせよという基本の部分だった。「言うたその日に返事がないのはどういうことか。その日どころか、言うた1時間後にそういうことがあるんだから。返事とあいさつは大きくという。小学生じゃないんだから」。基本の徹底を重んじる金本監督らしい言葉だった。

 練習中は選手、コーチが大きな声を出し、活気ある雰囲気に満ちていた。変革の1つに打撃練習もあった。すべての打者が初球から強く、フルスイングする意識を徹底していた。長時間となり、その意識が希薄になると、金本監督がケージ裏から、こんな声を飛ばしたという。「俺が代わりに打ってやろうか」-。1球、1球をフルスイングすることでの“きつさ”があったのかもしれない。「ちょっと抜いたら怒っているからね」。金本監督はその様子を見て、にんまりだ。

 もちろん、厳しいだけではない。選手の心理を見抜いたこんな“いじり”で盛り上げた。「上本(つらそうな)演技はいいんだよ。お前!」などなど…。選手たちも苦しい中に笑いが出た。明るく、厳しく-。まさに監督自らが、そのモットーを体現しているようだった。【鈴木忠平】