阪神金本知憲新監督(47)が8日、「即断即決」で高卒ルーキーを1軍キャンプに抜てきした。掛布雅之2軍監督(60)を通じて、前日7日に視察した2軍鳴尾浜キャンプで目についた植田海内野手(19)を高知・安芸のキャンプに緊急招集。秋季キャンプ時期には珍しいメンバーの入れ替えを断行し、ダイヤの原石に即、磨きを掛けた。

 電光石火の決断だった。7日に鳴尾浜での秋季キャンプを初視察した金本監督が動いた。最も目についたという高卒1年目植田を即、高知・安芸キャンプに合流させた。前夜、掛布2軍監督に打診したという。

 掛布2軍監督 昨日(7日)の夜、監督から直接電話がかかってきて、安芸に行かせたいと。こういう入れ替えはいい刺激になる。

 金本監督が視察する前から、植田は掛布2軍監督の「推しメン」だった。「横田や海(カイ)を一通り見てくれると思うんだ」と注目することを期待していた。鳴尾浜で金本監督は横田を「5年後に40発を打てる」存在として熱血指導。さらに、初めて見た植田の名前をおもしろい存在として真っ先に挙げていた。

 金本監督 バッティングも19歳にしてはね。かなりいいと思う。19歳というのが大前提だけど。あれが28歳と言われると、ふーんとなるけど。あとは、やっぱり守り。別格の、捕ってからの速さがある。足と守りと打撃。19歳のレベルでの完成度がね。

 高卒1年目での完成度にうなった金本監督は、さらにポスト鳥谷候補として大きく育てるために「スイッチ挑戦」を実行に移すことも決めた。

 金本監督 鳥谷をおびやかす存在? なって欲しいね。スイッチヒッターにもしたい。それはもちろん掛布さんの提案で。それは大賛成だしね。筋力がついてスイングスピードがつけばそこそこやると思う。

 新監督の言葉に、育成・打撃コーディネーター(DC)の立場として植田を入団から見てきた掛布2軍監督も呼応した。

 掛布2軍監督 足があるので左でも打たせたら面白いと思っていて、監督が本人と話をしたら、彼も興味を持っているということだった。春のキャンプで遊びで練習させても面白い。2、3年たつと面白いタイプ。ゲームになるといい意味でやらかしてくれるし、粘りもあって選球眼もある。彼にとっても大きなチャンスだよね。

 原石とみればすぐ磨きにかかる。植田はこの日の朝、高知行きを告げられ、午後、宿舎に合流した。「チャンスをもらったので、しっかりアピールできるようにしたい。特に足ですね。(金本監督からは)しっかりトレーニングして、体を大きくして、振る力をつけるようにと、言われました」と話した。まさに金本流の入れ替え第1号。その即断即決が猛虎の生存競争を活性化していく。【鈴木忠平】

<植田海(うえだ・かい)アラカルト>

 ◆生まれ 1996年(平8)4月19日、滋賀・甲賀市。

 ◆名前 「海=かい」はわかりやすく、大きく。小学生から漢字で書けるようにと両親が命名。

 ◆野球歴 小学2年時に甲南第二スポーツ少年団で野球を始め、遊撃手、投手。甲南中では甲南ビッグボーイズに所属し、遊撃手。高校は日本航空に入学し、一身上の都合で1年生の2月で自主退学。近江に転校し、3年夏は甲子園で3回戦進出。14年ドラフト5位で阪神入団。

 ◆1年目 2軍開幕戦は9番遊撃でフル出場。その後2番でも先発した。腰痛もあり2軍戦は117試合中51試合出場にとどまる。打率2割、1本塁打、5打点、6盗塁。

 ◆スピード 50メートル5秒8。高校時代は通算50~60回盗塁を企画し、失敗の記憶は1度だけ。

 ◆スイッチ歴 「少年野球の時に少しだけ左で打ちました」。今春キャンプ中に古屋2軍監督からスイッチヒッターを勧められ、挑戦を決意。

 ◆タヌキ 入寮時は故郷名物の信楽焼で、虎帽子やタテジマを装着したタヌキを持ち込んだ。

 ◆サイズ 175センチ、72キロ。右投げ右打ち。

 ◆家族 両親と弟。